ペップ・グアルディオラは言った。

「フォーメーションは電話番号のようで大きな意味はない。」

しかしこの日のオランダにとってその「電話番号」という名のフォーメーションはさながらラッキーセブンがいくつも並ぶような縁起の良いものになったのではないだろうか。何しろ世界王者を5-1で破ったのだから。

オランダが採った超現実路線の5-3-2

オランダの指揮官ファン・ハールはチームの心臓とも言えるストロートマン不在で世界王者スペインと対戦するということで超現実路線を採る決断をする。それはフォーメーションの並びで言えば5-3-2といういつの時代もウィングを使用し攻撃的サッカーを標榜に掲げ、スペクタクルを提供してきたオランダが選択したものとは到底思えないものであった。しかしそこには対スペインに有効とされるエッセンスがいくつも含まれており、自分たちの武器を最大限生かすことができる戦術家ファン・ハールが作り上げた「オランダらしい」5-3-2であったのかもしれない。

まず5バックということは中央にスペースが空きづらい基本的な3バックでありながら、両サイドもケアできるものである。オランダの場合、ただ守備的に5枚並べているのではなく、ビルドアップ時は現代サッカーでトレンドである後ろ3枚で組み立てるというものだった。オランダが何回まともにビルドアップをしたのかという論点はあるものの一応そういう形をとっていた。

そしてこの5バックの肝は守備時である。CBの三人はスペインのイニエスタやシルバなど曖昧なポジションをとる選手に対して前に捕まえに行く守備方法をしていた。よって誰か一人が前に捕まえに行けば後ろは慣れ親しんだ4バックに戻るという話である。果たしてその策が奏功していたのかというとこれまた微妙なラインで、PK献上のシーンはシャビを捕まえきれずに出されたスルーパスから生まれたシーンであり、前半のもう一つの決定的なシーンであったイニエスタの見事なスルーパスからシルバのループシュートも同じ事例だった。

ただ後半リードしてからは前に出ていく思い切った守備はいい方に作用していたと言える。しかしこのような守備には他に狙いがあったのではということを推察する。

【次項】「手っ取り早く得点を奪う方法」