現代フットボールの潮流に逆行しているとも言える戦術

その意味を示すためにどうやって5点も奪うことができたのかという点を明かしていかねばならない。それは一重にというのは過言かもしれないがロングボール戦術である。攻撃と守備は表裏一体である。オランダのCB三人は曖昧なポジションつまり前のボランチ二人との間で受ける選手には手荒な歓迎をしたが、バイタルエリアまでくれば迎撃をするような真似をせず、ブロックを形成するシーンが目立った。更にはその迎撃も成功し高い位置でボールを奪うことが出来たシーンも多くなかったので、攻めの始まりはいつも低い位置であった。

そんなオランダが手っ取り早く得点を奪う方法はとどのつまりロングボールだったわけである。このような現代フットボールの潮流に逆行しているとも言える戦術を後押ししたのは選手たちである。この日オランダが揃えた5バックの5人はフラールを除けば若くてモダンなタイプのDFであった。いわゆる強くて巧いというやつである。彼らは高精度のロングボールを前線に配給し続けた。

それを追うのがファン・ペルシーとロッベンという韋駄天かつテクニシャンのレフティ二人である。これらを考慮すればロングボールというのもあながち悪い選択肢ではないように思えてくる。ロングボールの定義を筆者が決めることは不可能だが、FKも含めれば5点中4点がパス一本で決まったような得点であることは偶然ではないだろう。

では果たして衝撃的なスコアが意味するのはパスサッカーの終焉なのか。否、そんなはずはないだろう。今回はたまたま様々なミスが重なり、ポゼッション型のチームが苦渋をなめただけであり、今大会でオランダが勝ち進むかということとはまた別問題というのが筆者の見方である。

しかし我が国日本で過熱するパスサッカー信奉を痛烈に打破し、スペインの新たな天敵となったという点ではオランダに大きな賛辞を(個人的に)送りたい。


筆者名:平松 凌

プロフィール:プロのフットボールライターを目指して、日々修行中。現在自分が何を書くのを得意としてるのか模索しています。自称国内屈指のバイエルンファンであり、話題に事欠かないチームに感謝してツイッターでは情報配信しています。
ツイッター: @bayernista25

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