こんにちは、駒場野です。W杯モードで、私のコラムも珍しく連投です(笑)。
最後のワンプレー、クリスティアーノ・ロナウドが送った執念のクロスボールでポルトガルが追い付いたアメリカ戦を最後に、全チームがグループリーグ(GL)の第2戦を終了。試合数としてはちょうど半分の32試合が終わりました。
そして明日からはいよいよGL最終戦ですが(※編集部注:6月23日時点)、既に敗退が決まった国を別にすれば、単純な「勝ち・分け・負け」だけではなくその点差や得点数も、決勝トーナメントの組合せも含めて微妙に関わってくるもの。
そこで、前回のコラムに続ける形で……というか、実はこちらの方が最初の構想だったのですが、W杯で多くの試合を行ったドイツ・ブラジル・イタリア・アルゼンチンの「ビッグ4」と、今回ブラジルと同じ勝ち点4でGL最終戦を迎えた「プラス1」ことメキシコの「勝ち方」を振り返ってみます。
☆「ウノ・ゼロ」神話の幻
まず、各チームの勝利・引分・敗北を改めて見ましょう。各チームともGL第2戦終了時点でのデータにしました。また、一番下の勝利については、< >内で全体の中での勝率を入れてみました。「ドイツ」には第二次大戦前のナチス・ドイツや戦後の西ドイツは入り、東ドイツは含まれない事も前回のコラムと同じです。
繰り返しになりますが、ブラジルとドイツはイタリアやアルゼンチンよりも一段高い勝率なのが分かります。試合数が多いのにこの結果なので、勝利数ではもっと差が開きます。
イタリアは、50勝目達成だったはずのコスタリカ戦で落とし、これで勝率が6割を切ってしまいました。もちろんウルグアイ戦はベスト16を賭けた決戦で、今回は引き分けでも勝ち上がれますが、勝てば2つの大台に到達&復帰です。
メキシコの成績が極端に悪いのは、最初は「欧州対南米」の構図で完全に草刈場となったためです。初めての引き分けは10試合目、1958年スウェーデン大会GLのウェールズ戦(1-1)で、1962年チリ大会GLのチェコスロヴァキア戦(3-1)で挙げた初勝利まで5大会、14試合かかりました。1970年の最初の自国開催以降だと、12勝9分13敗、勝率0.353と、かなり改善されます。
続いて、各チームの得点別試合数を見ましょう。ゴールが決まらなければ勝てませんね。 なお、延長戦でのゴールも区別せずに入れました。凡例は一番上にして、(試合数-1試合平均得点数)を入れました。
各チームの間には試合数の差がありますが、「0点」、つまりノーゴールで終わった試合はどこも15試合前後に集中しています。つまり、試合数の多いドイツやブラジルは完封される確率が低い事が分かります。
さらに「1点」になると、一番多いのはイタリア。一番多い30試合をカウントしています。凡例の部分でもあるように、イタリアは決して攻撃力の高いチームではありませんが、何とか1点を取る力は十分あるわけです。これはメキシコにも似た事が言えます。
ところが、カルチョの理想、アズーリの十八番とも言われる「ウノ・ゼロ」、つまり「1-0での勝利」を調べると、予想外の結果でした。<表1>では、1点だけ取った試合の結果とその勝率をまとめ、さらにチーム全体の勝率との差や、この「1-0勝利」が全試合の中で占める比率を計算しました。
「1点」試合そのものは30もあるイタリアですが、引き分けが11試合と、「ビッグ4」の他の3チームの倍以上もあります。つまり、そういう競った試合だと完封できないのです。これは他のチームも同じで、1ゴールで終わった試合は大抵の場合、全体の勝率よりも1割以上低くなります。特にブラジルの場合は2割以上落ち、さらに9敗もしている事から、こんなロースコアのゲームは苦手なのが良く分かります。
しかし、そんな逆境でも強いのが「ディー・マンシャフト」。こんな悪条件でも勝率は6割以上で、全体と比べても3分弱しか下がりません。敗戦もアズーリよりも少ない5試合にとどめている、これがドイツの底力です。
<参考リンク>「サポティスタ」ニュース(2009年11月20日)
土屋雅史(J SPORTS「Foot!」):
「実は1対0のゲームなんて全くやっていないイタリア代表」
http://supportista.jp/2009/11/news20080522.html
※2006年ドイツ大会からコラム掲載日までの国際Aマッチでの試合結果分析
また<図2>に戻ると、ドイツだけは「1点」ではなく「2点」が最多の27試合あることが分かります。今回のガーナ戦でも、逆転されたのを追い付く2点目を、ミロスラフ・クローゼが大会通算最多記録に並ぶ15ゴール目として決めていますね。
一方、「3-4点」の試合になるとブラジルが突出します。ブラジルが完封されたのは14試合ですが、「3点」は18試合でこれを上回ります。これはセレソンしかありません(ドイツは15試合で同数)。「4点」も13試合あり、ドイツを上回ります。その圧倒的な攻撃力こそ、セレソンの最大の魅力でしょう。