オランダ代表のフォント
case crouwel” by NIKE football&ウィム・クロウェル

(ウィムがデザインしたフォント)“Gridnik”をベースに、背番号の中を貫くラインは1970年代のフットボール界においてよく知られた背番号を思い起こさせる。そして、より威厳をつけるため、各背番号の下部には王立オランダサッカー協会のロゴが小さく収められている。

オランダ代表の新しいフォントづくりをウィム・クロウェルと直接行ったNIKE FootballのFloor Wesseling(アムステルダム出身のグラフィック・デザイナー)はこう語っている。

「僕たちがオランダ代表チームの(フォント)デザインについての仕事を始める際、簡単な書類を受け取りました。

インスピレーションされたイメージのなかにウィム・クロウェルの“New Alphabet”の小さなイメージがあったんです。僕らはウィムのことはすでに知っていましたし、彼にオランダ代表ユニフォームのフォントをコラボ―レーションしてつくることに興味があるか聞いてみたんです。彼は喜んで同意してくれました。

ウィムの“Gridnik”も参考にしました。典型的なオランダ語として認識できる読みやすくて素晴らしい書体です。僕たちはネームプレートに使うためにそれを縮めた(≒フォントの字幅を狭くした)ものをつくることに決めました。その後、オランダ・フットボールにおいて重要な時代である1970年代のレトロな背番号を示すようなインラインを背番号に入れました。

僕は一週間おきにウィムの家を行ったり来たりしていたんです。フォントの進展について論評しているとき、僕たちはコーヒーとストロープワッフル(洋菓子)をいっしょに楽しみました。

ウィムはいつもとっても明るくて、機知に富んでいて、自分のフィードバックを喜んで僕らに与えてくれました。彼は鉛筆を取ると、プリントに調整を加える。まず全体のバランスを変えて、その後にユニフォームの文字と数字の間隔をあける。名前と番号と背景のパーフェクトなバランスを探して。

このプロセスのなかで、僕たちはオランダ語の母音“ij"をSneijderのような名前の合字として使えることに気づきました」

よく見ると、IとJがくっついて合字になっていることが分かる

「僕たちは最終的な結果にとても満足しました。

オランダサッカー協会の歴史をたたえるクラシックなユニフォームを創ることが出来ました。と同時にこの国における最も重要なデザイナーのひとりがその仕事ぶりを見せるための舞台もつくったんです。

僕たちはこの新しいフォントを“case crowel"と名付けました。ただ単に最終的な作品の名前をつけるだけでなく、僕らすべてのとても特別なコラボレーションを祝うものでもあります」

ウィム・クロウェル

 「Floor (Wesseling)は私のフォント、“New Alphabet”と“Gridnik”からインスパイアを受けた。このプロセスにおいて私は彼のスパーリングパートナーとしての役目を果たした」 

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