一方、モドリッチは技術的にクロースよりも高いレベルにある上、一流のテクニシャンらしく自分の能力で負担を背負う意志も持っている。
両者を比較した場合(あくまで両者の比較において)、クロースが自分のリズムで味方をプレーさせるのに対し、モドリッチは味方のリズムや状況に合わせて自分のプレーを変えられる柔軟性があるのだ。
パス自体も、コースを読ませない角度の付け方に加えボールの強さや左右どちらの足に送るかといった配慮がなされており、いわゆる“メッセージ”を込めたパスを送っている。
キックの精度ではクロースに劣るかもしれないが、「味方にプレーをさせるのが非常に上手い選手」だといえる。だからこそ、彼が復帰して以降のマドリーは復調を見せていた。
ハードワークで貢献する選手同様こういった技術で負担を背負える選手がいると、チームメイトは楽をできるためチーム全体の攻撃も活性化しやすい。一番分かりやすい例がディエゴ・マラドーナやジネディーヌ・ジダンで、モドリッチが彼らに匹敵する選手というわけではないがプレーの質においては近い部分がある。
そういった点を意識して両者のプレーを見比べると、色々と面白いものが見えてくるのではないかと思う。
ちなみに、あくまでこの2選手間、そしてどちらかというと攻撃をビルドアップしていく短~中距離のパスにおける比較の話であり、クロースもプレービジョンに優れたトップクラスのMFということに変わりはない。アウトにかけた右奥へのロングパスなどは絶品で、局面を大きく変えるという意味ではモドリッチよりも優れる。
既にバイエルン時代にチャンピオンズリーグを制し、昨年のブラジルW杯でも優勝に大きく貢献したクロース。マドリードの地でもきっと素晴らしいキャリアを築いていくことだろう。