密かにサッカーとは切っても切り離せないものの一つ、それが移民だ。

昨今、ヨーロッパ各地で移民によるコミュニティの存在が大きくなるに連れ、その功罪が議論され政治にも大きな影響が及んでいる。

サッカーでは昨年、現日本代表監督のヴァヒド・ハリルホジッチが率いてW杯ベスト16へ進出したアルジェリア代表にフランス出身者が多かったことが話題となった。逆に、「二代目将軍」ジネディーヌ・ジダンやカリム・ベンゼマ、サミル・ナスリらはアルジェリア系のフランス代表選手であることが知られている。

南米では19世紀半ば以降、ヨーロッパから大規模に人々が移住。その結果、ルイス・モンティ(1930年W杯はアルゼンチン代表、1934年W杯はイタリア代表)やホセ・サンタマリア (1954年W杯はウルグアイ代表、1962年W杯はスペイン代表)、ジョゼ・アルタフィーニ (1958年W杯はブラジル代表、1962年W杯はイタリア代表)のように、複数の代表チームでW杯に出場することも昔は珍しくなかった。また、2000年代にはEUのパスポート問題で改めてヨーロッパから南米への移民が注目されている。

ただ、外側から様々な見方・見え方がある一方で、実際に当事者としての彼らはといえば、既にその立場にある以上「移民としてどのように生きていくか」というところに集約される。

たとえばオランダでは20世紀半ば、経済の発展により労働者が不足したことで主にモロッコなどから移民を受け入れたが、やはり現在では多くの国と同様「移民問題」に悩まされている。

そうした中で先日、オランダ在住のとある日本人デザイナーが、サッカーを題材にその「移民問題」をテーマにした映像作品を公開した。

『エルヴィオ』と名付けられたムービーは、デザイナーの藤田啓輔氏と、先月18日に7年ぶり22度目のオランダ王者に輝いたPSVアイントホーフェンとのコラボレーションで制作されたもの。

登場するエルヴィオ・ファン・オーヴァーベイク(Elvio van Overbeek。当サイト的な読み方としてはエルフィオ・ファン・オフェルベーク)は、日本の宮市亮も出場することが多いオランダ2部、エールステ・ディビジのヨングPSV(※PSVのBチーム)で主にプレーする21歳のアタッカーだ。

その彼には、「ファン・オーヴァーベイク」ではない、もう一つの名前がある・・・。

アンゴラからの移民である若者の生い立ち、そして“今”を綴った短編ドキュメンタリーとなっている。

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