「チリは11人の“カミカゼ”と一緒に戦う」
奇才マルセロ・ビエルサの信奉者として知られるサンパオリ監督は、5月の記者会見でこのように語った。
どんな試合でも全力を尽くしリスクを恐れず強敵に牙を剥くサンパオリのサッカーは見るものを虜にする。しかしその一瞬一瞬に全てを捧げているかのようなスタイルはどこか刹那的で、熱狂と同時に桜の花びらが散る儚さをも併せ持っている。
その哲学故に安定感と継続性に課題を抱え、その哲学故に全てを破壊する爆発力を秘めており、昨夏のブラジルW杯ではグループステージでスペインを撃破し、ベスト16では開催国ブラジルを最後まで苦しめたのである。
ブラジル戦では延長終了間際、ピニージャの放ったシュートがクロスバーを直撃し惜しくもPK戦の末に敗れたが、内容的には自国での敗北に怯える王国ブラジルを勇敢な小国チリが完全に凌駕していた。だからこそ、選手一行が帰国した際には大勢の国民が熱狂をもって出迎えたのであろう。
今大会もそのチームがベースとなっているが、各選手が欧州のクラブで充実したシーズンを送っており、国内はもちろん国外からも彼らを推す声が強い。
チリのレジェンド、マルセロ・サラスは「(今のチリ代表は)歴代最高のチームだよ」と絶賛している。