フランス代表でレギュラーを掴め
先月、フランス代表のディディエ・デシャン監督はキリアン・エンバッペの名を招集リストに含めた。エンバッペが代表資格を有するもう一つの国、カメルーンに彼を奪われないようにする予防策とも捉えられるが、既にリーグ・アンで10ゴール決めている選手を代表チームは無視できなかったと言える。正しい選択さえすれば約束された場所は遠くない。1年後に行われるロシア・ワールドカップに主力として乗り込むのも夢ではないだろう。
そして、その選択は噂されているレアル・マドリーやマンチェスター・ユナイテッドに行くことではなく、モナコに残ることだと私は考えている。 モナコの先輩であるアントニ・マルシャルを見てみよう。マルシャルは2015年夏にマンチェスター・ユナイテッドへリーグ・アン史上最高売却額で移籍した。結果的に移籍初年度の昨季こそ二桁ゴールを達成したが、今季はフリーで加入したリーグ・アンの"王"ズラタン・イブラヒモヴィッチの加入により得点と代表から遠ざかりつつある。
リーグ・アンで地盤固め
一方、2012年夏にチェルシーに移籍したエデン・アザールは1年目から“ブルーズ”の主力として活躍している。両者の違いは経験値。マルシャルの場合絶対的な経験値が不足していた。モナコのレギュラーFWとして1シーズンを戦う経験を、リーグ・アンでのシーズン2桁ゴールを達成せぬまま、ポジション的にもウイングかストライカーかが定まらないままイングランドに行ったことがキャリアの停滞を招いているのだ。
マルシャルとてまだ21歳なので答えを出すのは早計だが、少なくとも今苦しんでいる原因の一つに早期の移籍があったことは間違いない。一方のアザールはリーグ・アンで2年連続MVPを受賞してから移籍している。プレミアに行って成長する選手もいるのは事実だが、フランス時代は無名のエンゴロ・カンテでも1シーズンレギュラーとしてリーグ・アンを戦い抜いている。リーグ・アンでの経験と実績が大きなものであることは否定できないのだ。
マルシャルのように「年齢の割にすごい」だけではダメなのである。もっとも聡明なエンバッペは過熱する移籍報道にも冷静だ。自分がまだ移籍すべきでないと理解しているのだろう。「レアル・マドリー行きはまだ尚早である」というコメントを残している。マンチェスター・シティの法外なオファーを拒否したモナコもそういったことは理解しているだろう。今の成績では50億近い移籍金と活躍度が見合わなくなるのは目に見えている。
勝負は“今季ではなく来季”。この夏両ウイングのベルナルド・シウヴァ、トマ・レマールのどちらかは間違いなく去る。空いたウイング、もしくはセンターフォワードのレギュラーとして通年プレーし、圧倒的な活躍を見せればどれだけ高い移籍金がついてもその重圧をはねのけて活躍できるはずだ。真の才能は咲く場所を間違えない。エンバッペなら来季モナコで大輪の花を咲かせる決意をしてくれると信じている。