パワーポイントから生まれたクラブ

「ビジョンが先にあったので、クラブの名前は揺るがないものにしなければいけない。

そこに意義がある名前…インターナショナルなサッカークラブなんだから、そのまんま『インターナショナルFC』がいいんじゃないかと。

そしてその次にホームタウンはどこなのか、という話になりました。

真っ先に思い浮かぶのは、東京などのいわゆる国際都市でした。ただ、国際都市ニアリーイコール大都市。そこにはJクラブが複数存在していて、地域リーグなどの下のカテゴリーのクラブもすでにたくさんある。実家のある横浜にいたっては、何番煎じになってしまうのか…。

とはいえ、Jクラブがない都道府県を想起してみても、自分には縁もゆかりもないところばかりでしたし、国際都市としてイメージできるところは思い浮かびませんでした。

そんなことを考えながら呑んでいた時、『自分でやればいいんじゃないか』と言っていた仲間から、鎌倉の名前が出たんです。

鎌倉インターナショナルFC。響きは良い。

ただ少し調べて分かったのは、鎌倉には陸上競技場含めて、スタジアムと呼べるところは1つもない。それどころか芝生のグラウンドすらありませんでした。それで、その場でスマホのGoogleマップを見ながら、どこがいいかな~と話をしていました。

実際はそんな感じのノリだったのですが、まぁ、当時は本当に飲み屋トークみたいなものでしたからね(笑)。天然芝が敷き詰められた鎌倉カントリークラブを『ここ良いかなぁ』とか冗談を言いながら話していたら、深沢という場所に広大な空き地があるのが目に入って。

基本的に全部飲み屋トークだったので普通はこれで終わる話だったんですが、考えれば考えるほどと言いますか、妄想をすればするほど、面白くなっていったんです」

こちらがその深沢の空き地。元々はJR東日本の車両基地があった場所で、湘南モノレール・湘南深沢駅の目の前に約31ヘクタールの広大な土地が広がっている。

「その後、たまたま縁があり、当時、鎌倉市議会議員の永田まりなさん(※現在は神奈川県議会議員)を紹介していただきました。

そこで大急ぎでパワーポイントの資料を作り、深沢の空き地を勝手に”スタジアム候補地”として持っていったところ(笑)、意外にもポジティブな意見をもらえたんです。

彼女が言ったのは、鎌倉は外から見ると魅力的で、一つにまとまった小さな17万人の都市のように見えるかもしれない。ただ、実は地域や年代で様々なコミュニティがあり、まとまりきっていない。もし、プロスポーツクラブみたいな存在があれば、“One Kamakura”になりますよね?と。

しかも僕が勝手にスタジアム候補地とした深沢には、鎌倉市役所が移転する構想がある、なんて話も聞きました」