『Flashscore.com』が行った、元日本代表監督フィリップ・トルシエ氏への独占インタビューをお届けする。
元インタビュー掲載日:2026年6月19日、筆者:Anna Carreau/アンナ・カロー(Flashscore)
スイス相手に互角の戦いを演じたカタール、ウルグアイを揺さぶったサウジアラビア、そしてオランダと引き分けた日本。2026年ワールドカップは、AFC(アジアサッカー連盟)勢の見事な健闘が際立つ幕開けとなった。
こうした戦いぶりは欧州の視点から見れば驚きかもしれない。しかし、日本、カタール、ベトナムなどで指揮を執ってきたフィリップ・トルシエ氏にとって、これらのパフォーマンスは決して偶然ではなく、サッカーのグローバル化と集団としての戦術規律がもたらした必然だという。
71歳のフランス人指揮官トルシエ氏は、現在、日本メディアのアナリストとして2026年W杯を熱心に追っている。日本ではまさに“スター”的存在であり、直近ではベトナム代表も率いていた。本人は自らを何より「世界を渡り歩く監督(globe-trotting coach)」と表現するが、その華々しい経歴を見ればその肩書は十分にふさわしい。今夏、北米で戦う5つの国――コートジボワール、南アフリカ、モロッコ、日本、カタール――と深く結びついているのだ。
しかし、元FCルーアンおよびスタッド・ランスの選手だった彼を、代表監督としての役割だけで語るのは、4大陸にまたがる豊かなクラブ監督歴を見落とすことになる。フランス国内(レッドスター、クレテイユ、そして2004-2005年のオリンピック・マルセイユでの注目すべき指揮など)で経験を積み、その後は国外に出ることで自らの伝説を築き上げていった。
90年代初頭に驚異的な無敗記録を打ち立て、「白い魔術師」の異名を得たコートジボワールの名門ASECミモザをはじめ、南アフリカのカイザー・チーフス、モロッコのFUSラバト、チュニジアのCSスファクシアン、さらには中国リーグ(深圳ルビー、杭州グリーンタウン、重慶両江)での経験まで、トルシエ氏はグローバルなクラブサッカーの世界を知り尽くしている。
2002年には、共催国である日本を率いて同国史上初のW杯ベスト16進出を達成し、歴史を作った。初の48チーム制となる今大会を機に、同氏がアジア勢の躍進とその背景について独自の分析を語った。

欧州から見れば驚きにも映るアジア勢の健闘
――欧州の視点からすると、カタールがスイスと互角に戦ったり、サウジアラビアがウルグアイを苦しめたりするのは驚きに映ります。アジア連盟所属国のうち、これまで9試合を戦って敗れたのはイラク、ヨルダン、ウズベキスタンだけです。これをどう見ていますか。
「ワールドカップの初戦というのは、常に少し誤解を招きやすいものです。慎重に見なければいけません。4年前、サウジアラビアがアルゼンチンに勝ったことを思い出してください。それでもサウジアラビアは1次リーグで敗退し、アルゼンチンは世界王者になりました。つまり、たった1試合で多くの結論を出すことはできないのです。
どのチームも様子をうかがう立場にありますし、初戦に勝ったからといって突破が保証されるわけではないことは証明されています。また、この初戦では誰もが肉体的にも精神的にもピークの状態にあります。一般的に格下と見なされるチームほど、この最初の試合をより戦術的かつ守備的に組織して臨みます。リスクは冒さず、まずは負けないことが狙いです。いわゆる格下のチームにとって、初戦ではそれが普通の力学です。しかし、2試合目、3試合目になると、勝点の必要性がすべてを変えます。そして、そうしたチームが経験豊富な相手と同じだけのリソースを持っているとは限りません。
とはいえ、アジアのチームが好成績を残しているのは、多くの選手が欧州でプレーし、トップレベルの競争に求められる厳しさに慣れているからでもあります。イングランド、フランス、ベルギー、オランダ、ドイツなど、たとえ2部リーグであっても、高度な技術プログラムの中に身を置いています。だからこそ、彼らはもはや私たちがかつて思い描いていたような意味での『アジアの選手』ではないのです。例外を挙げるなら、依然として多くの選手が国内リーグでプレーしているサウジアラビアくらいでしょう。
また、アジアのリーグ、とりわけサウジアラビアのレベルが非常に高くなっている点も特筆すべきです。質の高い外国人選手が全体の水準を引き上げています。こうした要素がひとつのエコシステム(生態系)を生み出し、アジアの選手たちは数年前のように『親しみやすいが無名』という存在ではなくなりました。そこに加えて、外国人監督たちがチームを率い、戦術的経験やゲームプラン、補完的な戦術文化をもたらしている。私の見方では、それがこのワールドカップ初戦の結果を説明しています」
48チーム制は各国の発展を促す
――これは各国リーグ、あるいはより広く言えば、それぞれの国のサッカー全体の進歩を示しているとも言えるのでしょうか。
「オーストラリア、韓国、日本、サウジアラビアを見れば、いずれも質の高いリーグを持っています。おそらくイラクやヨルダンのように国内リーグの発展がやや遅れている国もあり、それが初戦敗戦の理由の一つでしょう。イランについては、全選手が国外、特にカタールでプレーしています。カタールのリーグもまた、多くの外国人選手や監督の存在によって非常に質の高いものになっています。
これは、48チーム制への拡大を説明する一因でもあります。より小さな国々に『いつかワールドカップに出られるかもしれない』というモチベーションを与えるための手段なのです。さらに出場国を増やすことすら想像できるかもしれません。
誰もが出場チーム数を批判しますが、今回の48チーム制W杯の序盤を見れば、どのチームも一方的に圧倒されているわけではないことが分かります。ドイツが7-1で勝った試合は例外かもしれませんが、それ以外はどれも接戦です。ですから、48チーム制に反対する論拠にはなりません。むしろ、すべての国に組織化を促し、リーグやインフラ、指導者や選手の育成への投資を後押しするのです。ワールドカップ出場を夢見られるというだけで、国を成長させる原動力が生まれます」
