4.あとがき

ここまで読んでいかがだっただろうか。

「複雑だが、サッカー界の素晴らしい制度」という感想が大半だろう。

そのうえであとがきとして2点述べたい。

1.複雑さゆえにプロのサッカー関係者ですら理解しきれていない

2.マネーゲーム加熱、移籍金高騰の世界は肯定するしかない

1点目は、「複雑さゆえにプロのサッカー関係者ですら理解しきれていない」。

★誤った具体例

私が以前、古橋のセルティック→レンヌ移籍の際に連帯貢献金の発生および金額についてXにてツイートしたところ、「今回の移籍で育成金は払われませんよ」と知り合い経由でプロのサッカー関係者の方から突っ込みがなされた。

こちらからすると、いやいや、連帯貢献金が発生しますよ、というか育成金ではなく連帯貢献金ですよ、と返したのだが「古橋と同行している唯一の日本人関係者の立場だが、今回の移籍では発生していない」と誤認が続いていた。

画像: 古橋亨梧 (C)Getty Images

古橋亨梧

(C)Getty Images

のちに、突っ込みを入れてきたのはサッカーのエージェント会社CAA BASEに所属する横尾理一氏だと明るみになった。

ちなみに、当然のことながら私の認識通り、「連帯貢献金は発生する」が正しかった(あとで聞いたところ、横尾氏はやはり連帯貢献金を育成補償金と勘違いしていた)。

ここで取り上げた理由は、決して横尾氏を責める目的ではなく、「選手と直で仕事をしているプロのサッカー関係者ですら、制度を理解していない」という事例として紹介するためである。

自分としてもこの出来事は結構驚きで、「プロの関係者ですら理解しきっていないとは…。この制度は本当に複雑なんだな」というのを改めて認識した。

実際、マスメディアにおいても移籍金の報道はされても、連帯貢献金についての報道はほとんどない。理由は単純で、制度が複雑で自分達では理解できない・計算できないためだろう。

サッカーファン・サポーターからすれば注目度の高いお金の話なので、ここは是非、プロならば理解を深めて移籍金とセットで報道してほしいところだ(私みたいなアマチュアがプロ以上に知識を有してしまい、最先端に位置してしまう状況はおかしいので)。

2点目の「マネーゲーム加熱、移籍金高騰の世界は肯定するしかない」。

これはどういうことかと言うと、ヨーロッパ、特にイングランド・プレミアリーグでは移籍金の高さがあまりに高騰しすぎていて、サッカー関係者ですら「馬鹿げている」「狂気だ」と呆れていることがしばしばある。

画像: (C)Getty Images
(C)Getty Images

自分も、放映権拡大や年俸高騰も含めて、バブルが過ぎると思うしこの肥大化はどこかで止めた方が望ましいかとも思っていたが、この連帯貢献金のシステムがある以上、「マネーゲーム加熱の世界、(やむを得ず)肯定」と考えを改めた。

何故か?理由は単純。

移籍金の異常な高騰に伴って、日本の街クラブや学校法人に莫大なお金が配分されるからだ。

前述の古橋の移籍に伴う、トータルの連帯貢献金をもう一度見てほしい。

アスペガス生駒FC:約3,500万円
興國高校:約7,000万円
中央大学:約9,000万円
FC岐阜:2,300万円

J3のFC岐阜にとっても高額だが、大学、高校、街クラブにこんな数千万円のお金が転がり込むのは本当に素晴らしい。

設備面の拡充、運営費・遠征費の補助…、とてつもないメリットがある。

学校法人ならばサッカーに限らず、伊東純也の例のように、別の部活動や食堂等の設備面にもこのお金をまわすことができる。

なんてありがたい金額か。一般人の寄付とは桁が違う金額が振り込まれる。

日本サッカー界、さらにはその他スポーツ界において、街クラブや学校法人の部活等にここまでの金額が入ることの貴重さ、重要性を痛感するし、新たなtoto助成金の類いが生まれたようなもの。

これもマネーゲームが過熱したからこその恩恵だ。

なので、この制度がある以上、ヨーロッパサッカー界におけるマネーゲームの肥大化は否定できない。日本の子供達、学校教育に携わる方々へ、こんな多額のプレゼントは他にないからだ。

以上、連帯貢献金の制度概要、具体的事例詳細、今後の課題、そして自分の考察含めて記載した「連帯貢献金制度の完全版」である。

理解が深まっていただければ幸いだ。

筆者:中坊

1993年からサッカーのスタジアム観戦を積み重ね、2024年終了時点で997試合現地観戦。特定のクラブのサポーターではなく、関東圏内中心でのべつまくなしに見たい試合へ足を運んで観戦するスタイル。日本国外の南米・ヨーロッパ・アジアへの現地観戦も行っている。

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