[J1第37節、FC町田ゼルビア 3-1 名古屋グランパス、11月30日、東京・町田GIONスタジアム]

町田は名古屋に3-1で勝利し、ホーム最終戦を白星で飾った。

この日右ウィングバックで先発したDF中村帆高は、今季の公式戦初ゴールとなる追加点を挙げて、チームの勝利に貢献した。

「みんなとよろこびを分かち合いたい…」

後半5分、右サイドからDF林幸多郎が相手ゴール前へロングスローを投げ込むと、オーストラリア代表FWミッチェル・デュークが頭でそらし、ボールは中央でフリーになっていた中村のもとへ。

そのまま右足を振り抜いてゴール左隅へ決めてみせた。

町田の背番号88は、「チームとして緻密に設計していた形だったのですが、あれだけ綺麗にデュークがそらしてくれると、逆に緊張しました」と得点シーンを振り返った。

画像: 天皇杯準決勝で古巣のFC東京と対戦した中村 (C)Getty Images

天皇杯準決勝で古巣のFC東京と対戦した中村 (C)Getty Images

得点が決まった瞬間、中村は真っ先に町田のベンチへ走って行った。

「みんなで取ったゴールだと思う。(試合に)出ている選手、出ていない選手、スタッフも関係なく戦っていたので、みんなとよろこびを分かち合いたいという思いでした」

今季から町田に加入した中村だが、1月のキャンプに負傷して戦線から離脱していた。

これまで中村は、2021年4月に右膝半月板損傷、2023年5月には右アキレス腱断裂の大ケガを経験したが、今回がプロ入り後初の移籍だっただけにショックは大きかった。

また合流直後に負ったケガの影響で、AFCチャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)の登録メンバーから漏れるなど屈辱を味わった。

チームの戦いをスタンドから見守っていた同選手は「自分が入ったときのイメージはしていた」という。

そして、先月18日に行われたJ1第34節アビスパ福岡戦で、自身がFC東京に在籍していた昨年11月30日以来、約11カ月ぶりに公式戦に出場。

それ以降は順調にプレータイムを伸ばし、ついにこの日、ゴールという結果でチームを勝利に導いた。

得点直後、真っ先にベンチへ走った理由は、支えてくれたチームメイトやスタッフへ感謝の気持ちを伝えるためだった。

画像: 天皇杯決勝のヴィッセル神戸戦にて、シュートを放つ中村 (C)Getty Images

天皇杯決勝のヴィッセル神戸戦にて、シュートを放つ中村 (C)Getty Images

黒田剛監督は「キャンプで負傷してから復帰しかけたときにまた再受傷して、 1年間本当に辛い日々を過ごしてきたと思います。彼の特徴、持ち味が何かを見せることなく、1年間が過ぎていったという状況でした。ただ、やはり中村帆高という選手の(運動)量とスピードが、チームの歯車となってくれた。前への推進力、そして守備もさぼらない彼の適応力。そういったものは随所に見られましたし、後半戦は彼が大きく奮闘して、いまの結果につながっている」と、中村へ惜しみない賛辞を送った。

それでも町田の背番号88は「チームとしても個人としても通過点に過ぎない」と気を引き締めている。

「左の相馬くんがいるように、俺もヘンリー(望月ヘンリー海輝)も含めて右からの脅威があったら、より左右から怖い攻撃になると思う。(この試合で)何本かいい形があったので、そのイメージを大切にして、“中村帆高単体”でも相手の脅威になれるようにやっていきたい」

町田は今月6日午後2時から、最終節での逆転優勝を目指す柏レイソルと対戦する。

長い負傷離脱から復帰した不屈の男のさらなる活躍を期待したい。

(取材・文 縄手猟)

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