
オープン前日には、京都を拠点に日本酒事業を展開する『Sake World』の菰樽とともに鏡開きを実施。左から ファビアン・アレグレ氏(PSG最高ブランド責任者)、ジェイ=ジェイ・オコチャ氏(元ナイジェリア代表)、ジェルマン・ザ・リンク(公式マスコット)、リチャード・ヘーセルグレイヴ氏。

鏡開きに使用した酒樽。ICI C’EST PARIS仕様はこの日のために用意したという。右は先述Sake Worldを運営する株式会社リーフ・パブリケーションズが提供
PSGが「日本の皆さんと積極的に交流したい」その理由は?
UEFAチャンピオンズリーグ(UCL)連覇を果たしたPSGは、多くの人で賑わう大型連休に、東京・渋谷でイベントスペースをオープンした。アーセナル(イングランド)との決勝戦では、英国風パブ「HUB」国内全24店舗にてパブリックビューイングを実施するなど、日本における多彩なプロジェクトを展開している。なぜ、ここまで日本市場に力を入れるのか?
「幸運なことに、わたしたちのクラブは、2022〜23年の夏に2年連続で来日し、たくさんのファンの皆さんに試合を見ていただきました。力強い声援を背負ってプレーすることができ、普段なかなかPSGの試合をご覧になれない方に、わたしたちのことを知っていただく絶好の機会にもなりました。これらのツアーを通じて、おかげさまで日本にお住まいのファンは増えているように感じますが、日本の皆さんと継続的に接触する機会を設けることで、長期的にファンやクラブの収益を増やしていけたらと思っています(リチャード氏)」

撮影:向山純平 イベントに合わせて来日したリチャード氏。クラブの最高収益責任者(CRO)を務めている。
ICI C’EST PARIS期間中では、元ナイジェリア代表で、現役時代には、ボルトン・ワンダラーズ(イングランド)で中田英寿氏とプレーした経験を持つ「ジェイ・ジェイ」ことオーガスティン・オコチャ氏が来日。かつてスーパーイーグルスのエースとして、世界を魅了したアフリカの魔法使いが、UCL覇者に贈られる「ビッグイヤー」(トロフィ・大きな耳に見えることからこの呼び名が定着)とともに写るシーンは、オールドファンが思わず胸が熱くなる一枚。

筆者撮影:

筆者撮影:
ICI C’EST PARISでは、国内外の著名なブランドやIPがパートナーとして協力。内覧会では、PSG公式マスコットキャラクター「ジェルマンくん」と、大手ゲームメーカー「SEGA」の代表ブランド「ソニック」が、館内を“散策”。

筆者撮影:
場内の一角には、「パートナーの皆様、ありがとうございます」との文言とともに、実際に協力している企業やブランドロゴが掲示。そこには、ゲーム(EAスポーツ、SEGA)といった関連性が高いものもあれば、家電(ハイアール)や日本酒(Sake World)など、“意図的”にやらなければ選ばれないであろう存在も。

筆者撮影:様々な領域の企業ブランドが協力
いわば、日本の様々なカルチャーに、PSGがデコレーションを施したのがICI C’EST PARIS。繰り返しになるが、このイベントはプロスポーツクラブが主催者だ。これだけの力の入れようは、日本に対して何かしら特別な感情を抱き、そして期待を込めているのではないか。

筆者撮影:懐かしのアーケードゲームに、フットサルが楽しめるミニコート

筆者撮影:限定で販売されたPSGと鉄腕アトムのコラボフィギュア
「PSGは世界に約40ものオフィシャルショップを展開していますが、そのうちの3店舗は日本(新宿、原宿、名古屋)にあります。デザインをはじめとするクリエイティビティの観点でも、日本の店舗が展開する商品はとても人気があり、世界中のファンが購入してくださっています。
各国で個性的な商品も展開しているのですが、日本で作られるグッズは『本当に特別なアイテム』として、受け入れられています。『世界で一番人気がある』と言っても過言ではないかもしれません。私たちはサッカークラブですから、もちろんクラシックなジャージをたくさん売ることも大切ですが、それだけでは伝えきれない魅力があると思うんです(リチャード氏)」
他にも、ここでしか買えないポスターやシャツといった限定アイテムが、多くのファンから支持を集めた。PSGは過去のジャパンツアーで、川崎フロンターレ・浦和レッズ・ガンバ大阪・セレッソ大阪などといったJリーグクラブと親善試合を行っており、その際に記念ポスターを制作している。ICI C’EST PARISでは復刻版が限定販売され、各クラブのサポーターたちを大いに喜ばせた。

筆者撮影:


筆者撮影:館内には過去のジャパンツアーで制作したポスターも掲示
「パリも東京も“ファッションの街“として有名ですし、PSGにとってもその切り口は本当に大切にしています。単にサッカーのユニフォームやジャージだけではなく、皆さんのライフスタイルに寄り添ったものも展開していきたいと思っています(リチャード氏)」
レセプションパーティーが開催
今回リチャード氏に話を聞いたのは、イベント前日に開かれたメディア向け内覧会にて。当日夜には招待客を対象にしたレセプションパーティーが、合わせて開催されている。証明を落とし、さながらナイトクラブの様相で、各界の著名人が、PSGがこの日のために用意した様々な”表現”を目にすることに。日中はパリに本店を置く人気ベーカリー「メゾンカイザー(MAISON KAYSER)」とコラボしたカフェコーナーが、バーへと変貌を遂げた。

筆者撮影:日中カフェコーナーだった場所がバーに変貌
店頭にはバーテンダーが待ち構え、来場者のオーダーに応じて、エスプレッソとウォッカ、そして赤みがかったお酒をシェイクした即席カクテルが提供される。ちなみにこの酒は、冒頭の鏡開きでも菰樽を提供した「Sake World」が展開するオリジナルブランド「Assemblage Club(アッサンブラージュクラブ)」というそう。なんでも、複数の日本酒を混ぜ合わせてできたブレンド日本酒だそうだ。

筆者撮影:Sake Worldが提供したオリジナル日本酒「Assemblage Club」の特別仕様(中)でつくられた特製カクテル(左)右はAssemblage Club「Taro´」
他にも音響機器が並んだテーブルが設置され、そこにDJが代わる代わるに選曲。ゲストたちは音楽を心地よく聞きながら、各々のコミュニケーションを取る。まるでパリのナイトタイムエコノミーを渋谷の地で再現しているかのようだ。

PSG提供:
パリの名店が特別出店 グルメ通を唸らせる

筆者撮影:パリ発のLa Brûlerie Belleville(ベルヴィル)が手がけたスペシャルティコーヒーや、Maison Kayser(メゾン・カイザー)による出来たてのパンも。鮮やかなトリコロールカラーが一際目を惹く。
ここまで記しているように、ICI C’EST PARISでPSGが注力している分野は幅広い。とりわけ「食」に関しては、ガストロノミー(美食)の文脈でもこだわっており、ハイアール協賛のもとで開催されたゲスト向けディナーでは、パリの代表的な名店として知られる「Bistrot Paul Bert」に、東京に拠点を置くフレンチレストラン「Méli Mélo」および「Pignon」とのスペシャルコラボレーションが実現。会場では、アジア・パシフィックエリアのマネージングディレクターをつとめるセバスチャン・ヴァゼル氏の姿も。

写真:PSG提供 スペシャルディナーを楽しむ食通の皆さん。
多くの美食家が舌鼓を打つ中、Qoly編集部も参加。魚(うなぎ)・肉(牛)の主菜とともに、赤と白のワインでペアリング。

筆者撮影:「燻製ウナギ、酸味のあるクリームソースと季節の柑橘」白ワインと共に登場した一品は、まるで鶏肉を彷彿とさせる肉々しさと、皮が口の中に残らないように調理された歯触りが印象的だ。

筆者撮影:「牛ヒレサラワク産 胡椒のソース 自家製ピュレ添え」 ややスパイシーで辛さのあるソースが特徴的な一品。こちらは赤ワインと合わせて楽しむ。
デザートタイムでは、チョコレートケーキが登場。さらに濃厚な味わいを楽しんでもらうためと、日本酒がペアリングとして提供。こちらの酒は、レセプションパーティーでも登場したSake Worldの「Assemblage Club」とのこと。スイーツ×日本酒とは斬新な組み合わせだ。

筆者撮影:「チョコレートムースと季節のフルーツ」 ブランデーを使ったスポンジと口の中でとろけるチョコレートの甘味。イチジクの歯応えが印象的なスイーツがディナーを締めくくる。

筆者撮影:「チョコレートムースと季節のフルーツ」の食前には、株式会社リーフ・パブリケーションズが運営する『Sake World』が展開する日本酒ブランド「Assemblage Club(アッサンブラージュクラブ)」が提供された。和洋の意外なコラボレーションが、グルメ通を唸らせた。
PSGの個性であり、パリらしさを追求した3日間

PSG提供:PSGが獲得したトロフィーの数々。イベントでは特別にビッグイヤーも展示された。チームはアーセナルとの決勝でCL連覇に挑む。
「私たちは、フットボール、アート、音楽、ガストロノミー、ファッション…どれも大切だと思っています。好きなものは人それぞれですから、何か特定のものにフォーカスするよりは、全てカバーするように心がけています。イベントでも、ビッグイヤー以外にフットボールの要素はさほどなかったと思いますが、これがPSGの個性であり、“パリらしさ”なのかな」
ルイス・エンリケ監督率いるチームは2025-26年シーズンも強さを見せつけ、リーグ・アン5連覇とUCL2連覇を飾った。ICI C’EST PARIS開催時点では、バイエルン・ミュンヘンとの準決勝第2戦前だったが、それでも世界の頂点に君臨するクラブのひとつといえよう。
それでありながら、「ここはパリ!」の和訳通り、PSGを通じた文化融合を図った空間がICI C’EST PARISだった。FIFAワールドカップ2026のち、世界各国のフットボールシーンは大きな動きを見せるだろう。その中でトップオブトップが見せた動きは、選手や競技だけでない、文化としてのフットボールに大きな影響を与えるのかもしれない。

PSG提供
取材:JUN・S

