リモートシャッターの操作について
「リモートカメラのシャッターを切る方法はいくつかあり、撮影シーンや設置環境に応じて使い分けています。最もシンプルなのは、ピッチサイドのフォトグラファーが手持ちカメラに装着した無線送信機を使用し、リモートカメラを遠隔で作動させる方法です。
一方、FIFAワールドカップのような大規模大会では、設置されるリモートカメラの台数が非常に多く、無線による電波干渉が発生しやすくなります。そのため、ゴール裏のリモートカメラなどは、安定した撮影を実現するためにトリガーケーブルを直接配線してシャッターを操作しています。
さらに、Canonのソフトウェア『EMR』を活用する方法もあります。ネットワーク上で複数のカメラを接続し、ノートパソコンから遠隔でシャッターを切ることができるほか、カメラが捉えている映像をリアルタイムで確認することも可能です。加えて、試合中の光の変化に合わせて露出などのカメラ設定を遠隔で調整できるため、刻々と変化する撮影環境にも柔軟に対応しています」
リモートカメラならではの価値とは
「私たちがリモートカメラを活用する上で大切にしているのは、『このイベントを、これまでにない新しい視点でクライアントへ届けられるか』という考え方です。
もちろん、リモートカメラが人間のフォトグラファーに取って代わることはありません。むしろ、ピッチサイドで撮影する経験豊富なフォトグラファーの視点を補完し、人の手では捉えられない新たなアングルやポジションから、決定的な瞬間を切り取ることを目的としています。
リモートカメラならではの視点を組み合わせることで、試合の臨場感や迫力を、より多角的に伝えられると考えています」
ちなみに、ダン・マラン氏は、日本代表のオランダ戦でリモート撮影した以下の写真が、試合当日6月14日のGetty imagesが選ぶベストショットに選出されている。最後にそちらのコメントも紹介。

「ダラス・スタジアムの高所に設置されたキャットウォークから、リモートカメラを用いて撮影されたこの一枚は、FIFAワールドカップ最大級の会場のひとつをまるで小さな惑星のように描き出している。
フォトグラファーのダン・マランは、大会開幕の数日前から専門機材を使ってカメラを設置し、安全訓練や綿密な準備を経て、観客席からは決して見ることのできない独自の視点を実現した。
約7万人の観客がピッチを取り囲む光景は、サッカーが持つ世界的な魅力を象徴するビジュアルとして表現されている。球体のような広角表現によって、試合そのものがひとつの世界の中心に置かれ、世界中の何百万人ものファンを結び付けるワールドカップのスケールと熱狂を印象的に伝えている」

ダン・マラン(Dan Mullan)
英国南西部を拠点に活動する受賞歴のあるスポーツフォトグラファー。イングランド・プリマスで生まれ育ち、プリマス・カレッジ・オブ・アートで写真を学んだ後、6年前にGetty Images初のスポーツフォトグラファー・インターンとして入社。その後、正社員フォトグラファーとなり、これまでにラグビーワールドカップ2大会、オリンピック2大会、FIFAワールドカップ1大会など、世界各地を飛び回り、さまざまなスポーツを取材・撮影している。現在は、国際オリンピック委員会(IOC)、ワールドラグビー、FIFA、イングランドラグビー協会(England Rugby)、イングランド・ウェールズ・クリケット委員会(ECB)などのクライアントと密接に連携しながら撮影を行っている。
筆者:奥崎覚(編集部)
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画像提供:Getty Images



