J1の清水エスパルスを長年支援してきた鈴与グループが、欧州サッカー界への本格的な進出に乗り出す。
鈴与株式会社は8月29日、デンマーク1部スーパーリーガに所属するラナースFCを運営するRanders FC A/Sの株式80%を取得する契約を締結したと発表した。
鈴与にとって今回の株式取得は、単純な海外クラブへの投資が目的ではない。長年支援してきた清水エスパルスとラナースを連携させ、両クラブが持つ経営、競技、育成、運営面の知見を共有しながら、双方の持続的な発展につなげることが大きな狙いだ。
その背景には、日本人選手を取り巻く欧州移籍市場への問題意識もある。近年は日本から欧州主要リーグへ移籍する選手が増え、欧州で高い評価を受ける日本人選手も珍しくない。
一方で、鈴与は「日本から欧州への移籍では依然として十分に市場価値が反映されていない例もみられる」と指摘。デンマークを欧州への重要な拠点とすることで、選手たちに成長段階に応じた挑戦の機会を提供するとともに、欧州の移籍市場への理解を深め、日本と欧州の間でより適正な評価・条件による選手移籍を実現することを目指す。
ラナースをパートナーに選んだ理由も興味深い。同クラブは2003年創立で、地域との強い結びつきや育成を重視する姿勢、データを活用した合理的なクラブ運営を特徴としている。
ラナース市民から幅広く支持され、スポーツを通じた地域コミュニティ形成にも貢献している点が、創業以来、地域社会との「共生」を重視してきた鈴与の企業姿勢と合致したという。
株式取得後も、ラナースの現在の経営陣や強化スタッフを中心とした運営体制は維持されるとのこと。競技面やクラブ運営に関する意思決定も引き続きラナースが主体となり、清水との連携も両クラブが主体的に進める方針だ。鈴与は短期的な投資リターンではなく、両クラブの長期的な発展を重視する。
1801年創業で、清水港を基盤に物流など幅広い事業を展開してきた鈴与。今回の80%取得によって、清水エスパルスを中心とした国内でのサッカー事業に加え、欧州にも足場を築くことになる。
日本人選手の新たな欧州挑戦ルートを開拓し、選手価値の向上にもつなげられるのか。清水とラナースの「国境を越えたクラブ連携」が、今後の日本サッカーにもたらす効果に注目が集まる。
筆者:奥崎覚(編集部)
試合だけでなくユニフォーム、スパイク、スタジアム、ファン・サポーター、カルチャー、ビジネス、テクノロジーなどなど、サッカーの様々な面白さを発信します。現場好き。週末フットボーラー。




