MLBが、再び大規模な労使対立に突入する可能性が高まっている。長期化すれば、来年のシーズンにも大きな影響を及ぼすことになるだろう。
『Sportico』によると、現在のMLB労使協定(CBA)は2026年12月1日午後11時59分に失効する予定で、球団オーナー側はその翌日からロックアウト(FA交渉やトレードなどの活動を一時凍結させる対抗措置)を実施する可能性が高いという。
交渉はすでに始まっているが、両者の主張には大きな隔たりがある。最大の争点は、MLB史上初となる「サラリーキャップ」(給料制限ルール)の導入だ。
MLBにはNFL、NBA、NHLのような厳格な年俸総額制限がなく、現在は一定額を超えた球団にペナルティを課す「ぜいたく税」が採用されている。
ただ2026年は9球団が2億4400万ドルの基準額を超過。なかでもロサンゼルス・ドジャースは、ぜいたく税計算上の選手総年俸が4億3300万ドルに達し、なんと税額だけで1億8300万ドルだった。一方、マイアミ・マーリンズの同総額は8400万ドルにとどまる。
オーナー側は、こうした格差が競争の公平性と球団経営の持続可能性を損なっていると主張する。サラリーキャップと同時に最低年俸総額となる「サラリーフロア」も導入し、全30球団の支出を一定の範囲に収めることを提案しているという。
『Sportico』によれば、検討されている案は上限が約2億4530万ドル、下限が約1億7120万ドル。2026年の年俸総額を当てはめると、上限超過の9球団は合計6億2700万ドルを削減し、下限を下回る12球団は合計5億4800万ドルを増額しなければならない計算になる。
当然、選手会は強く反対している。キャップが自由市場を制限し、年俸を抑える仕組みになると考えているからだ。
その代わりに求めているのが、最低年俸の大幅な引き上げである。現在約78万ドルのMLB最低年俸を、2027年に150万ドル、2031年までに220万ドルへ上げる案を提示。さらにFA権取得までの期間短縮、年俸調停を早く利用できる選手の拡大、若手向けボーナスプールの増額なども要求している。現在は基本的にメジャー在籍6年でFA権を得る仕組みで、選手会としては若いうちから市場価値に見合う報酬を得られる形に変えたい考えだ。
もう一つ、日本のファンにとっても無関係ではない争点がある。大谷翔平のケースで大きな話題になった「後払い契約」についてのものだ。
近年、球団は年俸の一部の支払いを将来へと先送りすることで、ぜいたく税上の負担を軽くする契約を使ってきた。その代表例が大谷翔平のもので、ドジャースと結んだ10年総額7億ドルの契約は、実にそのうち97%が後払いとなっている。
MLB側は、サラリーキャップを導入した場合、このような契約が制度の抜け道になりかねないと問題視している。一方の選手会は、後払いを制限すれば選手が得られる契約総額そのものが下がる可能性があるとして反対している。
交渉項目は、さらに国際ドラフトの導入、ドラフト制度改革、ロースター枠の拡大、マイナー降格回数の制限、クオリファイング・オファー制度(FAとなった選手に対し、元の所属球団が年俸上位125選手の平均額による1年契約を提示する規定。FA選手がオファーを拒否して移籍した場合、移籍先から旧所属球団に翌年のドラフトの指名権が補償される)の廃止などがある。
さらにMLB側は、2029年以降にレギュラーシーズンを162試合から154試合へ削減する案も提示したとのこと。その代わりに週1日の休養日を確保し、ポストシーズンの地区シリーズを5試合制から7試合制へ変更する構想もあるという。
MLBでは1994年にも労使対立が深刻化し、232日間のストライキでワールドシリーズまで中止された。直近では2021年12月から2022年3月までロックアウトが続いたが、公式戦の開幕は1週間遅れる程度に抑えられた。果たして今回はどれほどの影響が及ぶことになるだろうか。
筆者:石井彰(編集部)
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