ではそのときに台頭した選手が4年後に中心となっているのかと言えば、そうでもない。ロリアン(FRA)でプレーしているヴァンサン・アブバカルは得点ランク上位に付ける活躍を見せているが、今のところレギュラーには定着していない。全体的には「馴染みのメンツ」で構成されている。

長らく代表チームの旗印となっているサミュエル・エトーは、徐々にスピードや切れが失われているものの、それでも良い意味でも悪い意味でも、実力でもそうでない部分でも絶大な影響力を持つ「王様」だ。何かある度に代表招集を拒否し、偉い人に宥められては気まぐれに戻ってくるのはいつものこと。以前の報道ではFWアシール・ウェボやGKイドリス・カメニの起用を進言して監督に断られたことで代表引退を宣言したと言われていた。もし本当にそうだとしたら、監督にとっては難しい状況だ。

しかし、かつて浦和レッズを率いたことでも知られるフィンケ監督は、その中でも「意志」のある采配を見せている。

黒人が多数を占めるアフリカのチームというのは、身体能力に頼りがちな上攻撃のタレントが多いが故に、ディフェンスで大きな問題を抱えやすい。2002年に旋風を巻き起こしたことで知られるセネガルは、前線のタレント過多の状況が続き、その渦に飲み込まれて戻ってくることが出来ずにいる。逆に、アフリカで結果を残したチームは、おおよそそれに対しての対処法を打ち出し成功した者たちだ。

フィンケ監督が短い時間の中で作ったのは、守備が出来る選手を過剰なほどに配置することで、チームのバランスを強引に整えるという手法だ。

ボランチとして知られるジャン・マクンをトップ下やサイドに配置し、片方のサイドバックにはストッパーが可能な選手を起用。エノーやソングを中心に中盤を組み、「王様」エトーと、稀代のドリブラーであるムカンジョに攻撃を託す。その中で、守備が出来る上に得点感覚に優れ、ヘディングを得意とするジャン・マクンの存在はきわめて大きい。エトーが故障するよりも、むしろマクンが故障した方がチームとしてのダメージは大きいだろう。

この手法は、アフリカや中東においては比較的オーソドックスな手段だ。芸術性が落ちる反面、個々の安定感欠如をカバーしつつ、前線には少人数でも力を発揮できるFWがいるため、最低限の攻撃力を維持できる。トーゴ代表はこの性質のチームとして代表的なものだ。