1996年に行われたUAE大会以来、15年ぶりに冬に開催されるアジアカップ2010が開幕する。ホスト国は1988年に続いて2回目、23年ぶりとなるカタール。予選の参加国は25。それを勝ち抜いた10か国と前回大会の上位3カ国、AFCチャレンジカップの上位2カ国とホスト国のカタールを加えた16チームが本大会に参加する。
中東で開催される大会とあって、やはり今回はアラビア勢が優勢と言える。気候へのアジャストや移動距離の問題もさることながら、11月から12月にかけて行われたガルフカップで既に実戦を経験している国が多く、チームの完成度を高める機会を得ていたからだ。海外組が多いこともあって即席チームでの参加となる東アジア勢の強豪、豪州は厳しい戦いが予想される。
そうなると優勝候補に上げられるのはサウジアラビア…となりそうなところだが、これがそうも行かない。サウジアラビアはガルフカップにBチームを送り込んでおり実戦を経験していない上、チームの調子が上がっていない。ポルトガルの指揮官ジョゼ・ペゼイロの好むポゼッションサッカーに馴染んでおらず、12月29日の親善試合ではイラクに敗北するという屈辱の結果に終わっている。気候の面、そして国内リーグが秋春制であることから東アジア勢よりは有利だが、中東勢の中で一歩抜け出ているとは言えない。
その他に中東勢で上位が予想される国といえば、イラン、イラク、クウェート、そして開催国カタールの4カ国があげられるだろう。 ガルフカップ参加国の中ではやはり優勝したクウェートが注目となる。グループAは開催国が入っているため、4チームの実力差は大きくない。チームの完成度が高い事を武器にスタートダッシュ出来る可能性は高い。 もちろん前回王者のイラクも見逃せない。雑なチームではあるが2列目にはアブドゥル=ザフラ、ハワル・モハメド、イマド・モハメドとドリブラーが揃い、ボランチには昨年オランダでプレーしていたナシャト・アクラムが君臨。エースのユヌス・マフムードも健在で最高の陣容を揃えてきた。
ガルフカップ参加国ではないが、イランも移動距離や国内リーグが秋春制であることから結果を残しやすい環境にあるといえるだろう。スペインでプレーするネクーナムとショジャーイの招集にも成功し、昨今苦しんできたイラン代表チームの復活も見られるかもしれない。
一方、ホスト国のカタールは状況としては一番有利であるが、このところ内容、結果ともに良好ではない。ガルフカップでは屈辱のグループリーグ敗退を喫し、親善試合でもエジプトに勝利してはいるが、ほぼ90分押され続けオウンゴールに助けられた。ブルーノ・メツ監督が志向するモダンなショートカウンターが本大会で完成を見るかが鍵といえよう。ウズベキスタンとの初戦を落とせば、グループリーグ敗退も現実的になってしまうだろう。
しかしもちろん、強豪である日本、韓国、オーストラリアも不利な状況だとは言ってもそう簡単に負けはしないだろう。また、即席チームであるということは、逆に言えば相手に情報を知られていないということでもある。
つまりこの大会は「本命不在」。多くの国が優勝を狙える混沌とした状況で、1月7日にアジアカップは開幕を迎える。