2011年のU-21EURO当時の選手は1988-1991年生まれ、この年代が順調にキャリアを積んでおりベテランと融合したのがEURO2016予選アイスランド代表と言える。実際にオランダ戦の招集メンバー23名中、7名が当時のU-21EURO本大会出場メンバーで、オランダ戦には招集されなかったものも含めると10名以上が最近のA代表に名を連ねている。

MF:ソウラリン・ヴァルディマルソン 所属:IBV→IBV
MF:ビルキル・ビャルナソン 所属:ヴィーキング(NOR)→ペスカーラ(ITA)
MF:ギルフィ・シグルズゾン 所属:ホッフェンハイム(GER)→スウォンジー・シティ(ENG)
MF:ルリク・ギスラソン 所属:OB(DEN)→コペンハーゲン(DEN)
MF:アロン・グンナルソン 所属:コヴェントリー・シティ(ENG)→カーディフ・シティ(ENG)
FW:コルベイン・シグソウルソン 所属:AZ(NED)→アヤックス(NED)
FW:アルフレズ・フィンボガソン 所属:ロケレン(BEL)→レアル・ソシエダ(ESP)
2011年のU-21EUROメンバーとオランダ戦のメンバーで重複する選手のリスト、所属は左側が2011年時、右側が現在。着実にステップアップをしている。

地理的に近いイングランドでは、北欧の選手に対する評価が高い。北欧の選手は「勤勉で、従順、環境適応能力や言語にも問題がない」というのがその理由である。イングランドでは若手選手を春から夏にかけて北欧に短期レンタルすることで経験を積ませることも多いのだが、スウェーデンやフィンランドといった国に加え、アイスランドへの選手貸出も近年はよく見られている。レンタル選手を除いても、イングランドから9人、スコットランドから5人(2014年夏現在)が同国1部リーグでプレーしており、関わりは深い。ボルトン等で指揮をとったサム・アラーダイスは「アイスランドの人口はボルトンの人口とほぼ一緒である。そう考えると、彼らのクオリティは特筆に値する。多くのサッカー選手を海外に排出しているからだ」と語っている。

DFは2部リーグのロザラム所属だ!

「課題はない」と言えばウソになる。

例えば、上述のオランダ戦でのメンバーのうちDFは一人も2011年のU-21EUROメンバーはいない。シグルズソンは言う――「MFやFWは多くのタレントを抱えている。しかし、DF(の主力であるカリ・アウルナソン)はロザラム・ユナイテッド(現イングランド・チャンピオンシップ)だ!」と。彼は、壁になることは厭わないが、高さ強さに頼るばかりでなく後方からつないで行けるような足元のあるDFがいないことを指摘している。

事実、アウルナソンはクラブではMF登録であるにもかかわらず、代表ではパスがそこそこ出せて高さや強さがあることからセンターバックでプレーしている。日本代表で今野泰幸がセンターバックをやっていたのと同じ理由と言えばわかりやすいだろうか。

国内リーグはセミプロで、お金がない事実に変わりはない。政府の援助に期待する声もあるのだが、他力本願がメインでは長くは続かないだろう。それでも、才能は次々に開花しようとしているのだ。

アイスランドは2012年のU-17EUROでも本大会出場(ベスト8入り)を果たした。この大会で背番号1をつけたGKルナル・ルナルソンは1995年生まれながら既にA代表から招集を受けている。ユヴェントスが青田買いをし今季はチェゼーナへレンタルされているというホロドゥル・マグヌソン というDFの新星もいる(9月のトルコ戦で招集)。タイミング良く足りないポジションのピースを若手が担うことがあれば、EURO2004で本大会に進出したラトビアのような成功を感じさせると言っても良いだろう。

代表を率いるラーシュ・ラガーベックはかつてスウェーデンやナイジェリアを指揮しワールドカップに出場した。戦術や分析に長けた厳格な指揮官に対して、シグルズソンは「彼なら適切な指導をしてくれる」と言う。2013年からはアイスランド人のヘイミル・ハルグリムソンとの二頭体制となっており、ラガーベック得意のスタイルでEURO2016予選を戦っている。

11月に行われるEURO2016予選は、チェコに乗り込みアウェーでの首位決戦となる。チェコとは、あの2011年のU-21EURO予選でも同グループで対戦しており、運命の巡りあわせとも言えるだろう。前回の2014年W杯ではプレーオフの末、クロアチアの前に散った北欧の小国にとって、2年後にフランスの地を踏めるかどうかの試金石となりそうだ。

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