350人の指導者と400人のプロ選手

アイスランドサッカーの歴史は第二次世界大戦後にさかのぼる。1947年にFIFA加盟、同1954年にUEFAへ加盟、国際舞台への初挑戦は1958年のW杯予選からと遅い。しかも、1968、1972年のEURO予選には不参加と道のりは険しかった。

何せ、国土面積は日本の北海道と四国を足したほどしかない島国で人口は約32万人しかいない。サッカー人口は約22000人、そのうち男性のサッカー選手は約13000人だが、18歳以上の男性は約5000人、セミプロも含むプロ選手は僅か約400人しかいない。こういった数字はスウェーデン、デンマーク、ノルウェーの北欧3国には遠く及ばず、サッカー人口でもフィンランドを下回り、5歳から34歳までの男性がサッカーをする割合も約18%とこちらはフェロー諸島にすら及んでいない。

国内リーグにプロクラブは1つもなく、なんとすべてセミプロである。さらに『Morgunbladid』紙のヴィディル・シグルズソン氏曰く「過去のアイスランドサッカーはレギュラーシーズンが短く4-5ヶ月しかプレー機会がなかった」と、寒冷な気候で昼が極端に短いことによる影響を指摘している。

アイスランドの国内リーグは5月に始まり9月に終わる。これは世界最短である。オフシーズンは、室内で練習に励むわけだが「フィジカルのトレーニングに重点を置くしかなかった」と言う。ルカ・コスティッチによるリポートでも「以前は、フットサルとそれ以外のスポーツに励んでいた」と報告されている。

転機となったのは、15年前に設備投資の一環で人工芝を使ったグラウンドを国内に整備されたことだ。これにより、冬でも室内競技場でサッカーができる様になり練習、試合の機会ができたことで「フィジカルよりもテクニックが重視されるようになった」という。

12~2月:インドアサッカーのトーナメント
2~5月:人工芝アストロターフを使った地域のトーナメント
5~9月:国内リーグ
10-11月:人工芝アストロターフを使った地域のトーナメント
現在のアイスランドサッカーのスケジュール:1年中、何かしらの試合が行われている

同時に育成にも力を入れたアイスランドでは、ユース年代の育成と、それを教えるコーチの育成が大きな成長の土台を作ることとなる。現在、アイスランドの指導者のうち約40%がUEFAライセンスB級(約270名)を、約80名がA級を持っているという。合計すると約350名ほどになる。

これは上述のアイスランドにおけるプロサッカー選手の数に匹敵する多さで、ユース年代の選手に細やかな指導ができているという。2006年秋にはサッカー協会によるフットボール・アカデミーが完成し、サッカーだけでなくライフスタイルや栄養学を教えている。

こうした育成が実を結んだのが、2011年のU-21EURO本大会出場である。2013年、2015年の同予選では本大会出場はならなかったものの、2015年予選でもフランスに次いでグループ2位と底力は見せている。

U-21EUROでの一コマ。本大会出場したアイスランドはベラルーシ、スイスに負けグループ3位で本大会を後にした。しかし、得た経験は大きな糧となった。

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