今回のチェフの決断は、こういった過去があったからこそのものではないだろうか。

事実、チェルシー退団時に発表したメッセージには「昨夏の時点で正GKではなくなったことを悟った。だが、退団するのに相応しい時でないと思った」との一文があり、やり残した何かのために残留したようなニュアンスがうかがえる。そのやり残した何かとは、後継者の実力と意識を見届け、自らの意志を伝承することだったのではないか。

事の真相は本人にしか分からないものの、いずれにしてもこの1シーズンがクラブにとってもクルトワにとってもかけがえのない時間となったのは確かであり、感謝と賞賛の声がやむことはない。

デイヴィッド・ハイトナー記者(Guardian紙)

「最後の1シーズンを含め、11年間に及ぶ素晴らしい貢献をした。アブラモヴィッチ・オーナーもこれまでのことを振り返り、次の行き先を選ぶ権利はチェフ自身に与えるべきと考えたのだろう。それがたとえライバルクラブになろうとも」
ティボー・クルトワ

「ペトルの実力を見れば、今でも世界最高峰のGKであることは疑いようがない。彼のおかげで本当に良い関係が築くことが出来たし、お互いの成長を促せた。まさにレジェンドと呼ぶに相応しい選手と一緒にやれたことに心から感謝する」
ジョゼ・モウリーニョ

「10年前、私は非常に難しい決断を迫られた。それまで素晴らしい活躍をしていたカルロ・クディチーニとペトル・チェフを替える決断だ。今回の状況は当時と似ている。我々はクラブとして将来について考えなければならなかった。だが、ペトルが稼いでくれた勝ち点がなければ、チャンピオンにはなれなかった」

チェルシーにおけるGKというポジションは、いつも強いクラブ愛を持った最高の実力者が務めてきた。おかげで、もう長いこと人材に困った記憶がない。

この誇らしき系譜を、クルトワが継いでいってくれることを切に願う。

著者名:小松 輝仁

プロフィール:長野県在住のサラリーマン。中学時代にチェルシーに魅せられ、サッカーの「観る楽しさ」に気付く。その魅力を広く伝えるため一度はサッカーメディアに拾ってもらうも、途中で無謀な夢を抱いて退社。現在はその夢を叶えるために修行中。

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