失われた選手のモチベーション

モウリーニョと同様に勝利を追い求めた男、ファビオ・カペッロは「モウリーニョは偉大な指揮官だが、チェルシーの選手は燃え尽きている」と語った。

同様に厳格なチームマネジメントで知られる彼は、特にモウリーニョのチームが抱える問題を見抜いていたのかもしれない。クラブ上層部からの解任時の声明でも、ジョゼ・モウリーニョが選手の信頼を失っているという事は示唆されていたし、求心力をなくしていたという部分は様々なメディアによって報道されている。主将であるテリーは、選手がモウリーニョとうまくいっていなかったという報道を否定したものの、信じる人間は多くないだろう。

確執があったとされる1人が攻撃の主軸だったエデン・アザール。今季は輝きを明確に失い、守備力の不足という理由からベンチに座ることも。レスター戦での負傷交代は、仮病なのではないかという報道もあった。

また、ジエゴ・コスタも苛立ってモウリーニョにビブスを投げるシーンが目撃された。プレーを公然と批判されたネマニャ・マティッチも、モウリーニョに対して怒りを感じていたはずだ。

インディペンデント紙によれば、ジョゼ・モウリーニョをサポーターは最後までサポートし続けた。サンダーランド戦で掲げられたバナーには「お前らは、ジョゼに恥をかかせた。それはファンに恥をかかせることだ」という言葉が踊り、活躍した選手達には「チームが苦しい時、お前らはどこにいたんだよ?」と厳しいチャントが飛んだ。

インディペンデント紙のグレン・ムーアは「現在のフットボール選手は、経済的には恵まれているが、精神的には脆い」と述べた。そんな選手達が不調に陥った時、ジョゼ・モウリーニョの厳しいアプローチは効果的だったのだろうか。

彼らは発奮するのではなく萎縮し、反旗を翻すようになってしまったのかもしれない。これは、ある意味で時代の変化を感じる部分だ。

マンチェスターユナイテッドにおいて、比較的温和なモイーズの下では若手が造反を繰り返し、厳格なファン・ハールの下では選手が萎縮してしまっているように、求められるマネジメント方法が変わっている可能性がある。ESPNも「2000年世代」と呼ぶ彼らは、幼少期から豪華なアカデミーで育ち、良くも悪くも厳しい体育会系の社会を経験していない。「ファーガソンが今ドレッシングルームで怒鳴り散らしたら、選手は泣いてしまうだろう」という例えが象徴的だ。

現在マンチェスター・シティのSDを務めるソリアーノは以前「モウリーニョは勝者だが、勝つためにはチームに問題になる可能性があるほどの緊張感を作り出さなければならない」と述べた。その緊張感が若い世代にとってはプレッシャーになり、悪い方向に破裂した、ということなのかもしれない。

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