2014年夏に、柏レイソルからポルトガルの名門スポルティング・リスボンへ移籍した田中順也。

契約期間は5年で、バイアウト額は6000万ユーロ(78.8億円)に設定されたことでも話題を集めた。

だが、「ステップアップを求める有望な選手」なら、移籍を止められ好条件のクラブに移れなくなる可能性があるような条件は結ばない。

どちらかといえば『クラブ有利の契約を田中順也側が呑んだ』という形である。「ここ以上にステップアップしにくいのか。じゃあ他に行くわ」と言える選手なら納得しない契約だ。

とはいえ、2014-15シーズンは途中出場ばかりのなかで17試合で5ゴールと確かな結果を出してみせた。明るい性格からチームメイトにも馴染んでいたのだが、今季はそれが暗転。ベンチ入りすらままならない状態になり、リーグ戦の出場はわずか32分間となった。

そして1月のマーケットでは特にオランダのクラブが興味を示していると報じられる中、古巣である柏レイソルへの復帰(レンタル)が決まった。

なぜ彼の状況は変わってしまったのか?

2015年夏、スポルティングには新監督ジョルジュ・ジェズスがやってきた。

「ビッグ3」の一角でありながら、あの伝説のFWジャルデウが欧州ゴールデンシュー(欧州得点王)を獲得したシーズン以降リーグタイトルに手が届かなかったスポルティング。

まるでカルチョ・スキャンダル前のインテルのように、毎年期待されながらもベンフィカとポルトになかなか勝てないチームだった。


その雰囲気を一掃するために招へいされたのがジョルジュ・ジェズスだ。

個人能力に優れた選手に献身性を植え付けることでチームのバランスを作ることに長ける彼は、夏にブライアン・ルイス(コスタリカ代表FW)、テオフィロ・グティエレス(コロンビア代表FW)を引き入れた。

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