今年、清水エスパルスから期限付きでJ1王者・サンフレッチェ広島に加入したナイジェリア人FWピーター・ウタカ。

Jリーグ開幕前に行われた富士ゼロックス・スーパーカップで幸先よく初ゴールを記録したものの、その後はゴール・アシストなし。その間の広島は公式戦4試合未勝利で、得点も僅かに3。ここ数年、抜群の安定感を誇ったチームが苦しんでいる。

ただ先週末の名古屋グランパス戦では、ウタカの本領が発揮された場面があった。佐藤寿人がJ1歴代最多得点記録を更新する158点目を決めたこのシーン。

左サイドの柏好文から、中央を歩いていたウタカの足元へパスが渡る。名古屋の守備陣はすぐに佐藤寿人らボックス内にいた広島の選手に厳しくマークに付くが、ウタカが見ていたのはその誰でもなく、ひと山もふた山も先の、遠い右サイドにいたミキッチだったのだ。

「えっ?」

一瞬、スタジアムの時間が止まった。

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