――しかし、日本で未経験のポジションでいきなりスペインですよね。不安はなかったんですか?
まずは、気持ちで負けないようにしました(笑)
後は「前が空いたらシュート」。
フリーな選手がいたとしても「おれが絶対に打つ」ということは徹底してましたね。
当時をわかりやすく表現すると「全部、おれ」(笑)「PK、FKも絶対譲らん、CKはお前が蹴ってこい!」と(笑)
とにかく、サッカー選手として生き残るために必死でした。
――「FWは点を入れればOK」というスペインでの生き方ですね。
逆に言うと、日本のように「点以外で貢献する」ということが評価されないですね。
「自分はゴールを奪うためだけの選手じゃない」って言い訳が通じないんですよ。
――その後に移籍したドイツでも「FWに対する評価」は一緒でしたか?
全く違いましたね。
前線の選手でも「守備戦術は出来て当たり前」という文化なので、守備の重要度は100%。それが出来ない選手は起用されませんでした。
最低限の守備がベースにあった上で、「あなたは点が取れますか?周りを活かせますか?」という感覚ですね。
だから、僕が守備を勉強したのもドイツに行ってからでした。
――前での守備と後ろでの守備は違いますからね。
そうなんです。同じ守備でも別物。
僕はスペインでは攻撃のことしか考えていなかったので、ドイツでは頭打ちを食らいましたね。「こんなに違うのかよ」って。
――その中でも守備のタスクを免除されるタレントというのは…
本当に一握りですね。
「すごいパスが出せて、二人、三人かわして、シュートも打って…」という。
ただ、現代サッカーではそのクラスでも守備をきっちりするんですけどね。
――実際に見てきた中で「これは違うな」っていう選手はいましたか?
一番衝撃を受けたのは、ハノーファーで一緒にやっていたヤ・コナン(元コートジボワール代表FW)ですね。
「あいつ、あんなこともできるんかー!?」っていつも驚いてました(笑)
一見下手そうに見えるけど、リズムが人とは違うし、間合いの取り方も独特。
――サイドでも使われていた、セカンドストライカー的な選手でしたね。他には?
左サイドバックにいたクリスティアン・パンダーも記憶に残ってます。
とんでもないパワーで正確にボールを蹴るので、いつも「すげえなぁ~」と思って見てました。
というか、当時の主力メンバーは全員すごかったですね。誰もが武器を持っていました。
――「ブンデスリーガでスタメンを取れる理由がそれぞれある」ってことですね。
そうです。
ポルトガル人のセルジオ・ピントだったら、「インステップのキック」、「視野の広さ」、「シュートセンス」が別格。
ラース・シュティンドルだったら、「間でボールを受ける動き」だったり、「周りの使い方」だったり、「ドリブル突破」だったり、「決定力」だったり…。
そういうチームでやれていた余計に、シーズン途中に怪我をしてしまったことは今でも悔やむところですね…。
監督に認められるようになり、トップチームの練習にも継続的に参加するようになって、トップチーム昇格も見えてきた矢先の怪我だったので。
それさえなければ、「酒井宏樹選手とも一緒にできたかなぁ」とか考えたりもします。その翌シーズンに移籍してきたので。