――その話を聞くだけで、毎日が刺激的だったことが感じ取れます。
本当に強烈な毎日でしたよ。「おまえ、マジかよー」の繰り返し(笑)
僕、一人だけ疲れていて、皆、普通っていう…ね。
「おまえら、切り替えどんだけ早いねん!」って、よく一人でつっこんでました(笑)
――「攻守の切り替えの早さ」はドイツの代名詞ですしね。
本当に早いんです!
感覚としては、ボールを奪われることを前提に皆が動いているんですよ。そして、それが一人残らず意思統一されている。
何から何まで僕には足りないことばかりでした。
そのリズムに慣れるだけでも相当時間が掛かりましたね。
――比較的、「Jリーグは攻守の切り替えが早いリーグ」と言われているような気がしますが…
そのレベルじゃないですね。もっと早いです。そして、厳しい。
日本では「寄せている」と言われているものが、あっちでは「いてるだけ!」という感覚。
「相手を殴りにいける距離」を取らないと、相手も「寄せている」と感じてくれない世界なんです。
――しかし、その意識を修正することって難しくなかったですか?例えば、間合いの取り方にしても、その距離感って体に染み付いていたものがありますよね。
そうですね…。やっぱり、環境で培われているものがありますからね。
まぁ、自分の場合は、空手をやってたので助かったんだと思います(笑)
――空手経験が思わぬところで活きたんですね(笑)
はい(笑)「殴りにいける距離」を普通の人よりはわかっていましたから(笑)
――間合いの話で言うと、攻撃でもそうですよね。「ボールを隠せた」と思っても、実はそうでなかったり。
ですね。こっちが「大丈夫だ」と思っていても、足が伸びてきます。
だから、その動きを把握した上で「次どうするか」を何通りも考える。これを常にやってないといけないんです。
――それを「ずっと」となれば、体にもこたえそうですね。
体もそうですが、頭が疲れましたね。もう心身共にバテバテ…
周りからは「こいつ、テンパってるなー」と思われていたはずです(笑)
――試合中はどうでしたか?
試合になると、相手がもっと激しくなるので「当たり」のレベルも変わりましたね。
しかも、カテゴリーが下がっていくにつれて、その激しさが増すんですよ。技術をフィジカルでカバーしようとするので。
だから、タックルを一つ取っても、本当に深かった。
ただ、自分はトップチームで練習していたので、スピード面ではハノーファーのセカンドチームの試合(ドイツ4部)は楽に感じましたね。
――しかし、その反面、激しさは増すと。
「これファウルやろ!?」というのがファウルにならないですからね。ある意味、その違いは面白かったです。
だけど、とにかく痛かった…(笑)
「どうやってモロに受けないか」を日々勉強してましたね。
――この話は「日本人はファウルをもらうのが下手だ」という説にも繋がりそうですね。
世界はこのレベルで小さい時からやってますから。感覚的に、相手が来るタイミングと距離感がわかるんですよ。
だから、世界では、例えば、バルセロナのスアレスのように「ファウルをもらうのが上手い選手」が出てくるんだと思います。
(次回へ続く…)
レアル・マドリーの選手たちとのエピソード、そして、ブンデスリーガのファンであれば、きっと懐かしむであろうプレーヤーとの話はいかがだっただろうか。
外からでは体験することができない逸話の数々は、いずれも魅力に溢れていた。
そして、テーマはここから「日本サッカー界の育成」についてへ。
自身が体験してきたこと、また、指導者として子供たちと触れ合う立場だからこそ感じる、独自の「分析」は是非一読して頂きたい。
乞うご期待。
取材・構成:カレン