「日本代表」の個人能力が、システムを崩壊させた

2点リードとなったシーガルズは守備ブロックをかなり後方に置いて試合を運び始めたため、いくらハリマがボールを支配しても相手が奪いに来ない状態だった。

その上、海外経験も豊富な元日本代表がシーガルズの前線にいたことが、昨季まで主力を担っていたCBコンビが退団しているハリマにとって大きな脅威となった。

それは、今季からなでしこリーグに復帰したFW大滝麻未(上記写真・右)だ。

背番号30を着ける身長172cmの長身ストライカーは、中学・高校時代を過ごした古巣で「再デビュー」。高さや球際の強さはもちろん、前線からのアグレッシヴなプレスでもチームを引っ張った。

ボールの位置に対してゾーン守備のラインとブロックを作るシーガルズは、オーソドックスな<4-4-2>の布陣を敷く。そのため、攻撃へ切り替わった際は2トップにロングボールを当てることが多い。そんなシンプルな“縦ポン”が有効策となるほど大滝の存在感は大きい。その姿はまるで外国籍FWのような迫力を醸し出していた。

2点目の華麗な左足ボレーだけではない。2点をリードした後は、味方が後方に引いて前線が数的不利となっても、全く苦にせずにボールを収め続けた。後半になって攻撃のカードを次々と切ったハリマをよそに、彼女の存在が効果的なカウンターを導く。

それが追加点をもたらし続け、結果的には0-5の大差がつく試合となった。

ボールを支配するサッカーへの転換に「改革中」のハリマにとっては、相手に先制されると厳しい。とはいえ、ここで守備を重視してしまうと何の意味もない。

幸いにも、なでしこジャパンが来年の女子W杯フランス大会の出場権を懸けたアジアカップに参戦するため、ここからリーグは約1カ月中断。新たに『プレナスなでしこリーグカップ2部』が開幕する。

実戦を通して出た課題を修正しつつ、ブレずに新たなスタイルに取り組んでもらいたい。