「盲点」の利用で主導権を奪う

また、この日は相手が3バックのシステムを採用していることもあり、ボール奪取直後の守備から攻撃への切り替え時に、「3バックの盲点」である両サイドのスペースを使う攻撃から主導権を握り始めた。

15分頃には、主将MF杉田亜未が左足で狙った技巧的なループシュートがクロスバーを直撃。直後にはクロスのこぼれ球をMF森仁美が狙った惜しいミドルシュート。また、この日はアンカー役のMF乃一綾の強烈なミドルシュートも複数回あった。

<4-3-3>(あるいは<4-1-4-1>)のシステムを採用している伊賀で、中盤を担う3人が決定機や惜しいシュートを連発したのは、サイドからの仕掛けにより、攻撃に“幅”と“深さ”があったからだ。

ゴールから近い距離のFKを含め、良い位置からのセットプレーも多く獲得した伊賀。それでもなかなか先制点を決めきれずにいた中、前半終了間際に中央とサイドを巧みに使って崩し、均衡を破ることに成功する。

42分、バイタルエリアで上手く縦パスを受けた森が左サイドへパス。左ウイングの竹島加奈子が左足でふわりとした浮き球のクロスをファーサイドへ供給する。

これを大嶽監督が「チーム内で最もオフ・ザ・ボールの動きが鋭い」と評するMF下條彩が、小柄ながらジャンプ1番の打点で競り勝ったヘッドがゴールに吸い込まれ、ホームの伊賀が遂に先制。

前半は埼玉のシュートをゼロに抑え、完全に押し込みながら貴重な先制点を奪った伊賀が1点リードで折り返した。