シカゴ・ブルズのデジタル戦略

続く、シカゴ・ブルズのデジタル統括責任者であるダン・モリアーティは、より具体的なチームのデジタル戦略について語った。

アメリカで3番目に大きな街シカゴをホームとするブルズ。クラブ設立から53年間、ロゴが変わっていないNBA唯一のチームは、マイケル・ジョーダン在籍時代に黄金期を築き、世界的な人気を誇る。

その人気の高さ故か、デジタルへの積極的な投資は遅れてしまったが、逆にだからこそファンとの関係性を持つために、最初に彼らのファンがデジタルデバイスをどのように使っているかを徹底的にリサーチ。

現在は「コンテンツチーム」「プロダクトチーム」「グロース(成長)チーム」の計7名、デジタル部門としてフルタイムで働く優秀なスタッフを揃えており、そこにビデオチームやクリエイティブチームも関わる形となっている。

こうした体制になっているのは、すごい速さでデジタルが進歩し、マーケティングの質が変わってきたためだ。

これまではどんな人にも同じアプローチをしてきたが、今はそれぞれのファンによりフィットすることが必要な時代。単一のマーケティングではなくパーソナライズしたマーケティングを行うことの重要性は、UberやAmazonの例などからも明らかだという。

チケットに関していえば、初めてのサイト訪問者なのか、あるいは10回目なのか。アクセス元が国内なのか、それとも国外なのか。これらをデジタル的に見分けることで、「最初のページ」でいかにその人が興味を持ちそうなものを勧め、購入のモチベーションに繋げるかが重要になってくる。

現状デジタルはコストを生む部門の色合いが強いが、いずれは収益を生む部門となる。だからこそ、「なぜデジタルが必要か」などのWhyを理解している者が他のスタッフを指導することが重要だとモリアーティ氏は語る。

世界の変化に付いていくために、自分たちもデジタルマーケティングを駆使していかなければならない。そして、スポーツビジネスが進化し、コミュニケーションがデジタル化することで、ファンとの関係性もより幅広い形でとらえる必要が出てくる。

「クラブ名のタトゥーを入れているような人が、クラブの一部になっていかなければいけない」

ヘイナン、モリアーティの両氏が参加したパネルディスカッションで出ていたこの言葉が非常に印象的だった。