2021年8月19日、関西サッカーリーグ1部・おこしやす京都ACはシーズン途中にもかかわらず、チームに所属するMF寺田紳一の現役引退を突如発表した。
36歳となった寺田はガンバ大阪の下部組織出身。持ち前の高度なテクニックを武器に、JリーグではG大阪、横浜FC、栃木SCの3クラブに在籍し、リーグ通算311試合(J1:71試合、J2:240試合)に出場。2020年より関西1部のおこしやす京都でプレーしていた。
引退からしばらくの時を経たこのたび、プロサッカー選手として約18年間をプレーしてきた寺田に現役時代を振り返ってもらい、今後のセカンドキャリアについても語ってもらった。
――18年間お疲れ様でした。シーズン途中での突然の引退には何があったのですか?
引退を決めたのは、2021年7月7日に行われたJFLのヴェルスパ大分(@昭和電工ドーム大分)との天皇杯3回戦の試合後です。
(寺田氏が所属していた)おこしやす京都は2回戦でJ1のサンフレッチェ広島に5-1で勝ち、ヴェルスパにも勝ったら次はJ2のジュビロ磐田との対戦も決まっていたので、みんなのモチベーションも高まっていたんです。
そんな中、1-3で負けた試合直後、チームのみんなが悔しさいっぱいで泣いている中、75分から途中出場していた僕はみんなと同じ熱を感じとれていなかったんです。今まで1番大切にしていた『サッカーを楽しむ気持ち』が、感情が湧いてこなかったんです。
それで試合後にシャワーを浴びている時、チームメイトのFW原一樹くん(清水エスパルスや京都サンガなどで活躍したFW、昨季限りで現役引退)に『僕もう引退しますわ』と言って。
実は2017年限りで横浜FCを契約満了で退団した後にトライアウトも受けたんですけど、『Jリーグで』ってなると次のチームがなかなか見つかりませんでした。
それでも2018年から栃木SCでプレーできることになったのは、先に栃木加入が決まっていたガンバ時代の先輩オグリさん(大黒将志、元日本代表FW/G大阪アカデミーストライカーコーチ)から直接連絡をもらって、話を通していただけたからなんです。
でも、加入早々の練習でアキレス腱を断裂する大怪我をしてしまって。あの時は痛さもですけど、悔しさとか色んな感情が混じって涙が止まらなかったですね。地面に倒れる1秒もない僅かな瞬間に、今まで努力してきた自分やお世話になった人達の姿が頭の中にスローモーションで流れたんです。
その大怪我をした日はキャンプ明け初日でチーム全体の出来が良くなく、予定時間を延長して練習を継続することになったんです。その本来はなかったはずの練習でアキレス腱を切ったことで、『これで終わってしまう運命だったのか?』って考えたりもしました。
それでも『まだ続けたい』と思い続けていて、2020年からは、おこしやす京都でプレーすることになりました。
もし去年1年を通してプレーできていたら引退していたかもしれません。でも、新型コロナウイルス感染症の影響で去年はほとんど予定通りに試合ができなくなりました。『こんな中途半端な状態で辞めるのは嫌だな』と思って今年1年やって引退することにしていたんです。
でも、ヴェルスパ戦のあとはそういう気持ちも落ち着いて素直に『辞めよう』と思えたので、2日後にはクラブに引退の意思を伝えました。