指導者としてJリーグに戻ってきたい
――引退といってもまだ36歳。いわゆるセカンドキャリアについて思い描かれていることはありますか?指導者ライセンスもB級までは取得されていると伺いました。
セカンドキャリアは指導者になります!
A級はまだ取りに行けてないですが、特に今の自分がすごく関心を抱いているのは、自分がガンバで若手だった頃に松山吉之さん(現レイジェンド滋賀GM)やカタさん(片野坂知宏、G大阪監督)、和田治雄さん(JAPANサッカーカレッジ監督)が担当されていたサテライト(2軍)や若手選手たちの指導です。
ガンバで若い頃の僕は、先発出場を言い渡されていたのに自己管理を怠ってメンバーを外されたり、そればかりかトップチームからサテライト側のロッカーに降格させられ、トップ側に2カ月以上戻れないこともありました。あれがなければプロA契約(年棒に上限のない契約。J1だと試合出場時間が450分間を越えることが条件)にもっと早く辿り着いていたんじゃないかって今も後悔しています。
ガンバでは試合前日、ベンチ入りメンバー18人とメンバー外の選手がそれぞれ時間帯も異なる別の練習をしていました。そのメンバー入りした選手たちの練習メニューは“遊び”の要素も取り入れた2タッチゲームのような強度を落とした軽いものだったんですが、そこで集中力の欠如が目についた場合はいきなりメンバーから外されることもありました。
アキ(家長)もあったと思いますし、それこそ当時の若手の多くが経験していると思います。『足りないモノは自分で気付き、自分の武器は自分で磨く。自分で気付けない選手は消えていく』そういうプロの世界の厳しさに気付かされました。
ただ、当時のガンバは若手だけで週に2,3回は2部練習をしていました。水曜日には若手だけのチームで練習試合を組むこともよくありました。そんな時には当時のコーチであった松山さんやカタさん(片野坂)によく相談に乗っていただきました。
ガンバ時代だけでなく、こうして長くプロサッカー選手としてプレーし続けられたのはあの時間があったからだと思っているので今も感謝しています。 現在はトップとサテライトが完全に分かれて練習を行うクラブは少ないと思います。
でも、僕自身にとって本当に充実した時間でしたし、どのクラブにとってもこのポジションの指導者はとても重要だと思います。2021年のガンバが苦戦した背景には、それまでその役割をされていた山口智さんの穴が大きかったんじゃないかと思います。(山口氏は2021年から湘南のコーチへ転身し、同年9月には同チーム監督へ昇格)
ですから、僕もJリーグのクラブに所属していながら出番に恵まれていない選手、まだまだこれからの若い選手たちに近い距離に寄り添い、“横から目線な”指導をしていきたいと考えています。
このポジションを経験することで監督になりたい新たな意欲も生まれるかもしれません。実際、現在のカタさんや智(山口)さんは監督としてJ1のクラブを指揮されています。特にカタさんは大分トリニータをJ3からJ1まで昇格させて、J1でも優秀監督賞まで受賞されていますからね。
実は引退して直ぐにガンバや横浜FCで一緒だった松下年宏さんが指導するアルビレックス新潟U-15や僕自身が所属していた栃木SCなど、他にもいくつかのクラブの練習を見学させてもらいに行きました。松本山雅FCでは日本代表の司令塔だった名波浩監督ともコンタクトを取らせていただきました。
栃木や松本では『実際にやってみないと内容を深く理解できないから』って言われて実戦形式のトレーニングでフリーマンをやったんですけど、全く付いていけませんでした。引退して間もないのに。
Jリーグを離れて2年近く経ってたからなのか?プロとアマチュアの違いってこんなにあるんやって改めて思いました。指導者目線からの考えを知ると、練習メニュー1つ1つでも見方が変わります。
今は現役時代にできていなかった部分を勉強しています。試合が始まったらフォーメーションを見て、例えば[4-4-2]だったらどんなメリットやデメリットがあるのか?数的有利や不利をどのエリアで作れるのか?といったことですね。
もちろん、今でも頭では分かっているんです。でも、それを言語化して自分よりも年下の選手たちや子供たちにどう伝えるのか?人に伝えるスキルをもっと上げて行きたいと考えています。
――既に新しいチームも決まりましたね。
FCティアモ枚方のトップチームのコーチと、アサンプション国際中学校高等学校の中学1年生の指導を担当することになりました。
実は他にもJクラブのアカデミーや女子サッカーWEリーグのクラブからもお話をいただいていたのですが、ティアモには僕がガンバのアカデミーにいた頃に指導を受けていた鴨川幸司さん(FCティアモ枚方アカデミーダイレクター兼ジュニアユース監督)、アサンプションにはガンバユースの初代監督でもある上野山信行さんがいらっしゃることに強い魅力を感じました。
ティアモは現在J1から数えて4部リーグに相当するJFLに所属しています。ここで指導経験を積んでA級ライセンスを取得し、クラブとしても、1人の指導者としてもJリーグに行くのが今の僕の目標です。
おこしやす京都に所属していたからこそ身をもって実感できることなんですが、今は地域リーグのクラブにも本気で強化や育成、クラブ運営をしているクラブも多くあります。そういう意味ではティアモにはもちろん感謝してますし、おこしやす京都にも感謝しています。