W杯後のJリーグは盛り上がるか?
ここからは、角度を変えて考察してみたい。
4年に一度の大イベントであるW杯が閉幕し、2023年2月17日に今年度の Jリーグが開幕する。
W杯で高まったサッカー熱の行き先は、海外組が出場する欧州各国のリーグ戦または国内組と次の日本代表候補がプレーする Jリーグとなる。 Jリーグ側も果たすべき役割を理解しており、以下のプロモーション動画で関心を高めようとしている。
しかしながら、海外組がチームの大半を占める今、日本代表の奮闘が Jリーグの盛り上がりに繋がるかは難しいところである。
普段サッカーを観ない層がW杯をきっかけに“サッカーそのもの”に興味を持ったなら、『次は Jリーグを観てみよう』となるはずだ。だが、“日本代表”に興味を持った場合は……。答えは自ずとわかるだろう。
一方で、娯楽すなわちエンターテインメントとしての Jリーグは存在価値が高い。筆者が以前にアルビレックス新潟の試合を現地取材した際に、その意義を強く感じた。
デンカビッグスワンスタジアムでの取材を終えた筆者は、新潟駅まで移動するためタクシーに乗車した。運転手の方は物腰が柔らかそうな50代くらいの男性で、フランクに話しかけてくれた。
地元の名産を紹介していただくなど会話が弾むなか、運転手がこぼした言葉が今も記憶に残る。
『私たち新潟県民にとって、アルビレックスは娯楽のひとつ。(チームが)勝とうが負けようが、スタジアムに足を運ぶんです』
新潟というクラブはサポーターの応援が熱く、スタジアムが大観衆で埋まることで知られる。スタジアムに向かう理由は人それぞれだが、“サッカーという娯楽を楽しむ”という目的も確かに存在しているだろう。
話を戻すと、「日本代表と Jリーグは別物」というドライな結論が浮かび上がる。その結論を受け入れ、割り切って、日本代表の注目度を上げるためにJリーグをどのように活用していくか考える。
浮かんだのは、「Jリーグが日本代表へ戦力を供給する場である」という見方だ。プロとして勝ち負けを競う場であるのは重々承知のうえだが、代表選手を育成する場という側面もあるはずだ。
Jリーグから海外へ選手たちが羽ばたき、行く先々で成長を遂げ、それが日本代表の強化につながる。その意味で、チェイス・アンリと福田師王という超高校級のタレントが、Jリーグを経由せず海外へ渡ったという事実は重く受け止める必要がある。
これまでも同様のケースは存在しており、決して彼らの考え方を批判している訳ではない。ただ、Jリーグの存在価値を高めるには、プロ入りに際して海外クラブに負けない魅力を持たなければならない。
人々を熱狂の渦に巻き込む娯楽としての存在意義と並行して、代表選手を育成する場としても存在感を示す。 Jリーグ開幕から30周年を迎える記念のシーズンが、重要な分岐点となり得る。