Qolyメディアアンバサダーが語る、サッカーコラム。J1全試合を観戦するサッカーマニアが語る、今週末の注目の1戦のプレビューをお届けします。
J1初挑戦ながら確かな強さを誇る町田ゼルビア。「徹底する強さ」を併せ持ち、そのクオリティはJ1の舞台を掻き回しています。そして今週末、その町田ゼルビアとぶつかるのがアビスパ福岡。昨季のルヴァン王者は、前節の九州ダービーで完全勝利。ルヴァン王者の格を見せつけるために首位撃破を目論みます。
そんな一戦が面白くないわけありません。では今回はこの一戦がどのような展開になり、どこに注目したらもっと楽しく試合を見られそうなのか、僕(筆者:Nobuya Akazawa|J1全部見るマン|)なりに考えてみますのでぜひ一読ください!
今回の内容は以下になります。
・導入
・試合の大枠
・町田目線から考える試合展開
↪︎「迎撃」をどう作るのか?
↪︎崩しの切り札と対角
・福岡目線から考える試合展開
↪︎そうとは言えど効果的にボールを持てる福岡
↪︎やはり主流はボールの押し付け
・お互いに困ったときの逃げ道
ボールを持たざる者の振る舞いは?
両者の特徴と言えば、堅固な守備とそこから繰り出させるカウンターがあります。 そこでまず考えるべきところはボールを持たせるのか/持たされるのかです。
今季の平均ボール支配率。アビスパ福岡はリーグで一番ボールを持っていなくて、その次に町田ゼルビアと並びます。この特徴を考えた時に、やはり持たせるのか/持たされるのかが試合の分水嶺になるかもしれません
まずここに注目して試合がどう進んでいくかを確認して欲しいです。 ではこの大枠を確認した上で、より詳細に触れていきましょう。
町田ゼルビア目線から考えると…?「迎撃」をどうやって作るのか?
やはりポイントになるのはハイプレスとミドルプレス。ハイプレス時は424の人を基準としたプレッシングを使用します。 1stプレスライン(最初のプレス隊)が定まらない時、もしくは1stプレスラインが越えられた時は4-4-2のミドルプレスに即座に切り替えます。
これらを駆使して「迎撃」を作り速攻に出るのが町田ゼルビアの最大の強みです。 そこでアビスパ福岡に対して町田ゼルビアはどこで迎撃を作るのかを予想してみようと思います。
まず4-4-2の町田ゼルビアと3-4-2-1のアビスパ福岡。盤面でいくとズレが生じるのは当然です。そこで3CBに対してどのようにプレスをかけていくのかをぜひとも注目して欲しいです。
ハイプレスは?
僕の予想ではボールサイドのSHが外切り(WBを隠しながら)CBに向かっていくことを予想します。そこで2トップの最初のタスクとしてCHを消すこと(中央を消すこと)から守備が始まります。
こうなるとどこにボールを誘導、誘い込む事が出来そうか。それはSTのところです。
CBに外を見させない事でSTへの縦パスを打たせる事ができれば、CBが狙って対応をする事とCHが挟撃する事でボールを奪い切る、もしくはその次のプレーで回収する事は出来そうです。
きっと町田ゼルビアはこの方法でハイプレスを仕掛けるのではないでしょうか?
蓋を開けてみないと分からないですが、僕はこのように予想しますので、ぜひどうやって町田ゼルビアがプレスをかけて、どこでボールを奪おうとしているのかに注目して見てみて下さい!
ミドルプレスは?
ミドルプレス時は4-4-2になります。この場合は基本的に3CBにボールを持たせることを許容するでしょう。先ほども触れたように4-4-2の町田と3-4-2-1の福岡。町田ゼルビアはWBの対応をSHに任せるのは間違いありません。「まずは守備から、まずは危険なところから消す」が根底にあるので、ミドルプレスの時はあまり背後のスペースを開け渡さないのが町田ゼルビアです。
これで3CBの前進経路を潰していく事で、強引に打つ縦パスを奪っていく事を考えるのではないでしょうか。また下から進めない場合、ミドルパスを蹴らせていく事でCBで弾き返すことを考えています。
これを突き付ける事ができれば、アビスパ福岡にボールを持たせる事ができ、停滞感を押し付ける事ができるのではないでしょうか。 これで後ろ向きのプレーを選択した時に町田ゼルビアはミドルプレスを発動させ、そのままボールを狩りにいくと予想します。 ここの駆け引きとミドルプレスのスイッチが入る瞬間に注目すると面白いかもしれません。
ボールを持った時の切り札と対角
町田ゼルビアはマリノス戦で保持の局面も見せました。林選手を少し低めの位置に配置しつつ、平河選手の1vs1を強調。さらに藤尾選手やエリキ選手がロングボールで背後を伺っていく事で、同サイドの奥側を取っていました。これを繰り返し行ったことにより、手前で平河選手が仕掛けれる状況を作り出しています。
今週末のアビスパ福岡との一戦も平河選手を強調し、彼が果敢に1vs1を仕掛けてクロスからのフィニッシュを作り出すと予想されます。
彼の推進力とボールを持った時のワクワク感はユベントスのキエーザ選手を彷彿とさせるものがありました。確実に福岡を苦しめる切り札になる事は間違いなく、ここをどうやって強調していくかは1つの見所だと思います。
そしてこれを繰り返していく事により、対角のパスを使えるようになるのは必然です。背後と手前を使い続けると、アビスパ福岡のスライドを強要する事が可能になります。
そうなったらゼルビアは対角のパスを使って展開を広げていくと予想します。特にSBに望月選手が入る場合、高さも速さも強さも、そして器用さもあるので瞬間的にSHの選手と数的優位を作り出して攻撃を仕掛ける事が可能になります。
現にマリノス戦はこれを押し出し、攻撃の迫力を維持して見事に逆転しています。 ポイントとなるのはやはり背後と平河選手、そしてそれによるスライドの強要になりそうです。
アビスパ福岡目線から考えると…?
そうとは言えど効果的にボールを持てる福岡
前節の九州ダービー。支配率は37%とやはり低いものでしたが、効果的にボールを持てるのがアビスパ福岡です。特に右サイドのSTとWBの関係と、左サイドのCBとWBの関係はゼルビア相手にも刺さるものだと予想します。
なぜ効果的なものと予想するのか。まず町田ゼルビアのプレス構造として4-2-4(ハイプレス)もしくは4-4-2(ミドルプレス)の形を作り出します。 この時3CBに圧力をかけるのはCFとボールサイドのSHになるでしょう。(町田ゼルビアの2トップの最初のタスクはCHを消すことから始まります。)
そして町田ゼルビアはSHが外切りを行った時、中央経由/頭上を越えるパスでWBに逃げられた時の対応を突き付けられると思います。
前節対戦したサガン鳥栖も似たような形でプレスを採用するのですが、それを上のパスと下のパスで上手に回避して速攻へ移ったのがアビスパ福岡です。左WBに入るであろう岩崎選手の縦突破と右STに入るであろう北島選手か金森選手、場合によっては重見選手の外流れからの仕掛け。彼らへのボールの届け方はアビスパ福岡の攻撃の生命線となりそうです。
さらにそれに付随して起こり得そうなのがSBを呼び込みです。これを作り出した時にSBの背後を取っていく事が出来れば町田のカウンターを未然に防ぐ事が出来そうです。
やはり「主流」はボールを押し付ける
ボールを持たざる者の美学。守備の美学。アビスパ福岡はボールを開け渡す/ボールを押し付ける事を得意としています。この信念を植え付けて徹底して行えるチームを作り上げている長谷部監督の凄さを実感します。
町田ゼルビアは17節のアルビレックス新潟戦のように持たされると停滞してしまいます。なぜならハイプレス/ミドルプレス+迎撃⇨ショートカウンターをボールを持っていると作り出せないからです。
そしてボールを押し付けることに長けているのがアビスパ福岡。ではどのようにボールを押し付けるのか。まずやはり速攻と攻撃の完結による強引なボールの開け渡しです。アビスパ福岡の速攻の殆どはフィニッシュで終われるので、必然的にゴールキックやGKのキャッチで攻守が入れ替わります。当然のことですが、コーナーキックを取れればベターで、ゴールを奪えればベストです。
これによってまずはボールを押し付けていく事を考えます。
ではここからどのように守備を行うのかを考えていきましょう。
ハイプレス
ハイプレスは基本的に5-2-3の形になります。1stプレスラインは中央を消しながら外側に誘導する事が多くなります。町田ゼルビア相手だとSBのところに誘導する事が多くなるでしょう。
ここの誘導の仕方が存外に秀逸なのがアビスパ福岡です。さらにここから迎撃の準備をします。
例えばサンフレッチェ広島や名古屋グランパスなどはSBのところまでWBを押し出す方法を取るのですが、アビスパ福岡はSBにSTを当てに行きます。ここでボールを奪う事は余り考慮しておらず、次のパスを奪う事を狙っています。
だから町田ゼルビアSBのところに誘導すると、CH↔︎CHの構図とSH↔︎WBの構図を作り出します。ここでゼルビアの平河選手やバスケスバイロン選手をどのぐらい潰し切れるかはこの試合の分水嶺となりそうです。
さらにCH脇に降りてくるCFにはCBが迎撃を作り出します。当然ですが、ここもどのぐらい藤尾選手やエリキ選手、ないしはオセフン選手に勝ち切れるかはポイントとなります。
この方法が主流となるでしょうし、これを作り出した時のアビスパのショートカウンター発動率はかなり高い印象です。
ミドルブロック/ローブロック
ハイプレスを仕掛けない場合のアビスパ福岡は5-4-1のミドルブロック/ローブロックを形成していきます。これを形成したときのアビスパ福岡は常にサイドに誘導しつつ、数的優位な守備に持ち込むことを考えています。
こうなった時の町田ゼルビアの攻撃と照らし合わせて考えてみてみます。
- 背後へのパス
- 5−4のブロックを形成して背後のスペースを消しているので、弾き返すことが可能になると予想します。
- SHへのパスと仕掛け
- ここに対してはWBとWBのヘルプを行うSTで数的優位を作り出して対応すると予想します。
- 対角へのパス
- 対角へのパスは場所を埋めているので、ズラされずに弾き返すことが可能になると予想します。
こう考えたときにアビスパ福岡はボールを押し付けて試合を進めていくことで、町田ゼルビアの攻撃を食い止めること、そしてそこからカウンターに出ていくことができていきそうです。
やはり攻守の分かれ目となるのは1vs1の入り方とそこで剥がされるか否かになるのではないでしょうか。
困ったときの逃げ道
お互いに困ったときの逃げ道として用意しているのがCFへの上のパスです。これを積極的に使っていくことでボールを押し付けること、ないしはゲーゲンプレス発動とショートカウンターで仕留めていくことを考えるのが両チームです。
だからこそ、シンプルなCF vs CBの肉弾戦と2nd回収の勝負はこの試合の最も重要な局面になることは間違いないでしょう。
まとめ
首位を守るために、上位戦線、そして優勝争いに絡んでいくために勝ち点3が必須のゲームです。注目ポイントとしてはやはりボールを持たせるのか、持たされるのか、そしてどのように迎撃を作り出してカウンターに出ていくのか。この辺りに注目していくと少し詳しく、そしてもっと楽しくサッカーを見れると思います!
何よりも激戦必至のこの一戦を感情の赴くままに楽しんでいきましょう!
Nobuya Akazawa|J1全部見るマン|(YouTuber) サッカーの楽しさ、スタジアムの良さを広めるため、YouTube『Footballのハナシ【J1全部見るマン】』で試合の分析レビュー動画を更新中。ロンドンにサッカー留学経験があり、FA license Level1・2を取得している。