木曜日に行われた会合において、アメリカ女子サッカーリーグと選手協会の間で進められてきた団体交渉協定が締結された。
予定よりも2年間も早く批准されたこの協定は、アメリカにおけるプロスポーツでは非常に画期的なものになっているという。
『Guardian』によれば、この団体協約には最低給与額と給与上限の引き上げ、医療オプションの拡大、そして「完全なるフリーエージェントモデル」が入っており、ドラフト制度の廃止が組み込まれているとのこと。
日本のプロ野球でも使われているドラフト制度は、アメリカにおいてはプロスポーツの一般的なシステムとなっており、クラブ側が選手のキャリアを大幅にコントロールできるようになっていた。
しかしながら今回の協約においてアメリカ女子サッカーリーグ(NWSL)は、全選手が自由に加入するクラブを選ぶことができ、契約条件で許される限りは他のチームとの交渉も可能となる。
NWSLでは2022年からフリーエージェント制度を導入しており、一定期間クラブに所属した者は移籍が可能になるという限定的な仕組みを使っていた。今回はそれをさらに拡大させ、ヨーロッパとほぼ同じシステムになる。
なお、アメリカのプロスポーツではこのNWSLが「初めてドラフトを完全廃止する」リーグになるとのこと。
NWSLのコミッショナーであるジェシカ・バーマン氏は、このドラフト廃止に至った理由について以下のように話しているという。
「才能ある人材を巡っての世界的な労働市場があることは明らかだった。そして、選手の移籍や権利行使に関しては、我々が世界基準に沿った運営をしていなかったことも事実だった。
我々が世界最高のリーグになるためには、世界最高の選手を引き付けることが極めて重要だ。アメリカにいる選手もいれば、他の国にいる選手もいる。
出身地に関係なく最高の選手が集まるリーグにしたい。自ら課した障害を取り除き、世界最高の選手がリーグに参入できるための明確な道筋を作ったのだ」
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なお、NWSLの最低賃金は2025年に4万8500ドル(およそ707万円)、2030年には8万2500ドル(およそ1203万円)に引き上げられる。クラブあたりの給与上限も330万ドル(およそ4.8億円)から510万ドル(およそ7.4億円)まで段階的に増額される予定だ。
さらに育児休暇や不妊治療、育児手当の支給など選手に対するサポートも改善させ、各クラブには医師、アスレティックトレーナー、理学療法士、スポーツ科学者、メンタルヘルスサポーター、マッサージセラピストなど10名の医療専門家を雇うことが義務付けられる。