イギリスにおいて、アイルランドに関する諸々の問題は100年以上にわたり常に懸案事項であった。1937年のアイルランド独立後もそれは変わらず、アイルランド共和国軍(通称IRA)の関連組織によるテロ事件は近年でも発生している。
イギリスのフットボールにおいてもアイルランド問題は影響を及ぼしており、その一つがイングランド代表とアイルランド代表両方の代表資格を持つ選手の問題である。両地域の代表資格を持つ選手というのはイギリス国内では決して珍しくなく、バイエルンのイングランド代表FWハリー・ケインなどもその一人である。
しかしながら、センシティブな2国の間からどちらかを選択するという行為は時に過激な批判が伴うこともある。実際、育成年代やA代表の親善試合ではアイルランド代表として出場しながら、結局イングランド代表を選択したアーセナルMFデクラン・ライスが脅迫されるという事件も過去には起こっている。
そんな中、今回のイングランド代表はアイルランド代表経験もあるリー・カーズリー暫定監督による体制に加え、先述のライスや、彼と同様に育成年代ではアイルランド代表であったグリリッシュなどが招集されている。皮肉にも、そんな新イングランド代表の初対戦は8日のアイルランド戦。現地では既に一触即発ムードが漂っている。
元アイルランド代表GKシェイ・ギヴンは英紙『The Sun』のインタビューに対し、「(リー暫定監督の)初陣がアイルランドでのアウェー戦というのは本当に運がいいね」「ライスとグリリッシュもかつてはアイルランドの緑のユニフォームを着ていた素晴らしい選手だ。きっと歓迎されるよ」と皮肉たっぷりに答えている。
また、アストン・ヴィラ時代に同僚であったグリリッシュに対しては「ダブリンでは素敵な歓迎を受けることが出来るように準備しておいてほしい」とメッセージを送ったそうだ。