地域リーグからJリーグへ―。この理想を掲げてクラブ運営をするチームは日本中に数多くある。その中でも衆目を引く成長を遂げながら下部カテゴリーから駆け上がる社会人チームが存在する。
東京都葛飾区を拠点とする関東リーグ1部南葛SCは、世界的なサッカー漫画『キャプテン翼』の原作者である高橋陽一先生がオーナー兼代表取締役社長を務め、「ボールはともだち」をモットーにJリーグ入りを目指している。
2018年にスポーツジャーナリスト、出版業経営者からサッカークラブ運営のゼネラルマネージャーとなった岩本義弘代表取締役専務兼GM(以後岩本GM)にインタビューを実施。
連載インタビュー初回はクラブとの出会い、GM就任の経緯などを振り返っていただいた。
(取材・撮影・構成 高橋アオ)
取材日2024年5月25日
葛飾からJリーグへ、畑違いの挑戦
――岩本さんと南葛SCの最初の関わりは、2013年10月、高橋先生が当時東京都社会人サッカーリーグ3部だった南葛SCの後援会会長に就任した際とお聞きしています。
高橋先生が後援会会長に就任するタイミングで、先生のマネジメント担当としてミーティングに同席したのがきっかけでした。それまでは葛飾ヴィトアードというクラブ名で活動していましたが、高橋先生から「葛飾からJリーグを目指していくならば、南葛SCというクラブ名にしませんか?」と関係者に提案がありました。そこから南葛SCというクラブの歩みが始まったんです。
――これまで岩本さんはスポーツメディア業界でご活躍されてきました。南葛SCのフロントとしてクラブ運営に関わり始めた時期はいつごろですか。
南葛SCに関わる前は、サッカーを中心にさまざまなスポーツメディアを運営する株式会社フロムワンに約20年在籍し、2016年2月まで代表取締役兼サッカーキング統括編集長を務めていました(統括編集長は2017年2月まで)。
それと並行して、2016年2月に高橋先生と株式会社TSUBASAを立ち上げ、『キャプテン翼』のライツ業務を担当しました。2017年の春からは高橋先生との二人三脚が本格化し、先生から「南葛SCの運営についても真剣に向き合いたいので、力を貸してもらえませんか?」と声を掛けてもらったんです。一緒にやっていくと決めた高橋先生からの依頼ですから、僕の中にはもちろん「YES」の回答しかありません。その後、2017年の夏ごろに翌シーズンからのGM就任の話があり、編成をはじめとした準備に取り掛かりました。
当時、専従のスタッフは一人だけ。もちろん、チームには監督やコーチがいましたが、フロントスタッフとしては僕ともう一人が手弁当で仕事を回しているような状況でした。ただ、高橋先生が本気で南葛SCと向き合うと覚悟を決めた以上、このままでは先生の期待に応えられないだろうと。そこで、2019年1月に株式会社南葛SCを設立したんです。組織としての仕組み作り、クラブを運営していく資金の確保など、Jリーグ参入に向けて優先順位を明確にしながら業務を遂行していける体制を作りました。