キャプテン翼の力で笑顔に
東京都リーグ1部時代の2019年12月、南葛SCはJリーグ準加盟クラブの参加資格を踏襲した、「Jリーグ百年構想クラブ」に都道府県リーグ所属クラブとして初めて認定された(2023年の規約改定により、現在は同資格がなくても特定の条件をクリアすればJ3ライセンスが交付される)。Jリーグの理念を理解し、地域密着を掲げるクラブが、東京都葛飾区に拠点を置いた理由を岩本GMに聞いた。
――改めて現在の岩本GMの立場・役割を教えてください。
株式会社南葛SCの代表取締役専務兼GMとして、事業と強化の責任者を務めています。
――スカウトや強化は元プロ選手が担当することが多い仕事です。メディアから入った人間からすれば、未知の領域だと思いますけど…。
ヨーロッパサッカーが中心ですが、スカパー!やDAZNなどで20年近く解説者をやらせてもらいましたし、Jリーグや日本代表戦の取材には日常的に足を運んできました。プロ野球界に「名選手、名監督にあらず」という言葉がありますが、元プロ選手でなければ選手のクオリティーを見極められないとは考えていません。
また、サッカーメディアの人間として、本当にたくさんの選手、監督、コーチ、経営者に話を聞いてきました。そのため、自分の中では「正解は分からないけれど、間違っていることは分かる」という感覚で、トライ&エラーを繰り返しながら業務に当たっています。
どれほど世界的なビッグクラブの監督やGMでも、うまくいかない時にはうまくいかない。ある意味、そういうものだと捉えて、自分一人ではなく、フロントスタッフたちと一緒になって物事を進めています。もちろん、クラブに関わるすべてのことは、その都度高橋先生にも相談しています。
――クラブのビジョンについて教えてください。岩本さんは個人のX(旧Twitter)スペース(公開で複数人に向けて音声で会話できるライブ機能)などで、「Jリーグの参入は通過点」というお話をしていたと思います。そこに絶対上がるとかじゃなくて、もっと大事なものがその先にある的なことを言われていたと思うんですが。
それはちょっと違いますね。Jリーグ参入は通過点なのではなく、「Jリーグ参入だけを目指しているわけではない」というスタンスです。南葛SCはビジョン、ミッション、バリューを掲げており、ビジョンの中には「サッカー、スポーツ、『キャプテン翼』の力でみんなをもっと笑顔に」というフレーズがあります。
高橋先生は、ご自身が生まれ育った葛飾の下町エリアに大きな愛着を持っています。先生は東京都立南葛飾高校出身なのですが、“南葛”というのは母校の名前に由来しています。だからこそ南葛SCは東京都葛飾区を拠点にし、将来的には東京、日本全国、そしてアジアへと笑顔の輪を広げていきたい。その過程で多くの方々にたくさんの夢を見てもらうためにも、現時点では“Jリーグ参入”という分かりやすい目標があったほうがいいと考えています。そして、Jリーグに上がるだけでなく、その先にJ2リーグやJ1リーグへの昇格、さらにはアジアを代表するクラブになるというフェーズもあるので、数多くの物語を皆さんに楽しんでもらいたいと思っています。
また、ただただJリーグに上がることだけを目的としているのであれば、「ボールはともだち」をキーワードにしたスタイルは効率がよくないでしょう。見ている人もプレーしている選手も楽しめるサッカーを、東京23区で初となるサッカー専用スタジアムで展開する。今まで誰もやってこなかったことを目指すからこそ、夢があって面白いと思うんです。
――2023年にはサッカー専用スタジアムの候補地も決定していたんですよね。
2023年2月に葛飾区と候補地の所有者が正式に協定を結び、今年3月に取得が完了しました。建設に向けた座組やスケジュールは今後詰めていくことになりますが、土地の取得は大きな前進であることに間違いありません。
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