競技面はGM入閣初年度でリーグ制覇も

岩本GMがフロントに入閣した2018年にチームは東京都リーグ1部で優勝するも、関東リーグ2部昇格がかかった関東社会人サッカー大会では2回戦で敗退。コロナ禍の2020年に関東社会人大会を制して関東リーグ2部昇格を果たすと、翌2021年には同リーグを2位で終え、入れ替え戦を経て2022年から関東リーグ1部に戦いの場を移した。現在、チームは日本フットボールリーグ(JFL)昇格を目指して奮闘している。

――常勤フロントスタッフ一人だけでクラブを回していたとは。想像を絶する大変さですね。

ただ競技面というか、ピッチ上ではいい結果を出すことができていました。GM就任初年度の2018年、東京都リーグ1部はとてもレベルが高く、現在はJFLに所属するクリアソン新宿も同じリーグのライバルでした。その中でも、同シーズンは2位のクリアソンを抑えて、南葛SCは優勝することができたんです。

――GM入閣初年度で優勝はすごすぎますね。

2018年には、プロ経験のある選手を2人獲得しました。一人が、アビスパ福岡、徳島ヴォルティス、ヴァンフォーレ甲府などに所属していた柴村直弥。もともと関係性のあった選手で、南葛SCに加入する直前はクリアソンにいました。東京都リーグ1部に初挑戦する上で、そのリーグのことをよく知る選手が必要だと考えたんです。彼には選手兼コーチとして、南葛SCの一員になってもらいました。

もう一人は安田晃大(元日本代表DF安田理大の弟)。彼は直前まで愛媛FCの選手だったので、J2リーグから東京都リーグ1部の南葛SCに来てくれたことになります。さらに同年8月には、元日本代表の福西崇史さんに、約10年ぶりに現役復帰してもらいました。選手としても十分に存在感を示してくれましたし、南葛SCの名を世に広めることにも大いに貢献してくれました。

彼らがチームにさまざまな影響を与えてくれて、東京都リーグ1部は数試合を残して優勝を決めることができました。もっとも、その後の関東社会人大会では2回戦で敗れ、当時の目標であった関東リーグ2部昇格とはなりませんでした。もちろん悔しい気持ちでいっぱいでしたが、一方で、“都道府県リーグから地域リーグへ昇格する”というのは、“地域リーグからJFLへ昇格する”というステップアップの次に困難なことだとよく言われています。あくまで個人的には、GM就任初年度で関東リーグ2部昇格まであと少しというところまで勝ち上がることができた。だから、「これは結構いけるのではないか」というのが当時の僕の心境でした。

翌2019年、先ほども触れたとおり株式会社南葛SCを設立し、予算規模を上げて福西さんに監督を任せ、元Jリーガーを複数補強しました。ただ、そう簡単にいかないのがスポーツの世界なのでしょう。このシーズンは、東京都リーグ1部で7位という悔しい結果に終わりました。

現在の南葛イレブン

――さすがは地獄の東京都リーグ1部。攻略が非常に難しいリーグですよね。

2018年はギリギリの勝負をモノにして、結果的に断トツの1位になったのですが、2019年は「やっぱり東京都リーグ1部はハンパないな」と実感させられました(苦笑)。僕自身、すぐに翌年での再起を誓ったことをよく覚えています。

その翌年(2020年)、結果として関東(サッカーリーグ2部)に昇格できました。監督は名古屋グランパス時代に風間八宏さんの下でやっていた島岡健太さん。来シーズンを考えなきゃいけないときに、ちょうど風間さんがグランパス(の監督を)を辞めたタイミングでした。「ボールを大事にするサッカーをするんだったら風間さんの下でやってた人がいい」ということで紹介されて、島岡さんが監督を受けてくれました。島岡さんの下、「止めて蹴る」から始まって今年から(監督は)風間さんだけど、ある意味そこからボールを大事にするサッカー“風間イズム”のサッカーを始めた感じですね。