引き込まれないために
小林が感じたギャップはチーム内にも漂っていた。これまで欧州、日本代表という舞台で世界と渡り合ってきた男が見てきた景色と、チームメイトが見据えるビジョンに隔たりが存在している。

「例えばJ1、海外、代表のクラブでやってきた選手たちは、自分の周りに、もっとやっている人がたくさんいるわけですよ。そういう中にいたら、自分ももっとやんなきゃと思って、いろいろなことに取り組んでレベルアップするために頑張るじゃないですか。
だけど、(いまいる場所は)そうじゃない。もう別にこれぐらいでいいや、面倒くさいみたいなね。必死でやることは格好が悪いと考えている人もいる。そういう環境にいると、人間はそっちに寄っていく、引き込まれていくんですよ」と赤裸々に語った。
これまでさまざまな修羅場を乗り越えてきた強じんなメンタリティがあるからこそ、どんな環境であっても自分を見失わない。目標は明確であり、小林はブレずに目標に向かって突き進んでいる。

「例えば代表を例に挙げると、クラブハウスに行けば、早く来て準備している人もいれば、トレーニングを既に始めている人もいる。自分よりももっと努力している選手たちがたくさんいる。それを見ていたら勝手にモチベーションが上がりますよね。でも、ここはそうではないから自分でモチベーションを常に最高潮に持っていかないといけないんです。だから自分は恵まれていたな」
未経験の環境で新たな学びを得た。自分を見失わない難しさ―。どのような環境でも我を貫く姿勢は、いつになっても変わらない。
