サッカーに限らず、あらゆるジャンルのスポーツチームに欠かせない “スポンサー”。
資金面からクラブを支える各企業は、サポーターと並んで「12番目のプレイヤー」の一員と言えるだろう。
とはいえ、多くのサポーターにとって、スポンサーという存在は少し縁遠いものだ。
そんなスポンサー活動の実態を明らかにするために、本記事では、ヴィッセル神戸のスポンサー(オフィシャルパートナー)を務める株式会社LIFULLに話を伺った。

株式会社LIFULL エントランスの様子(筆者撮影)
数多くのプロスポーツ競技の中で敢えて“Jリーグ”をスポンサーとして選ぶ理由。そして一社会人としての『好きなチームとのかかわり方』の新たな形にも迫る。
株式会社LIFULLは住宅・不動産情報サービス『LIFULL HOME'S(以下、「ホームズ」)』の運営などを行う会社で、2007年から2013年までの6年間、J1ヴィッセル神戸の本拠地であるノエビアスタジアム神戸(当時はホームズスタジアム神戸)の命名権を有していたほか、2020年から同クラブのスポンサーに復帰している。
LIFULLのTさんも、現在所属している会社を旧ホームズスタジアムのネーミングライツ時代に知ったという。
――担当者の方もヴィッセル神戸サポーターなのですね。
「祖母の家が近く、(ノエビア)スタジアムができる前、(神戸市立)中央球技場のころから知っていて。それもあって、2002年からヴィッセル神戸サポーターをやっています」
――ホームズスタジアムのネーミングライツは2013年に終了しましたが、2020年からは8年振りにスポンサーとして復帰しました。その背景について教えてください。
「2020年に会社の企画の一つとして、プロモーションの一つとして、『どこかのチームのスポンサーをやるのはどうだろう』というのを自分のほうから立案しました。
私はヴィッセルサポーターですが、別に会社を使って好きなことをしているわけではないので、フラットな形で他のチームとも比較させていただきました。
その中でヴィッセルさんとネーミングライツをしていたときの関係性がX(旧Twitter)上でも結構見られました。ホームズの公式アカウントのフォロワーにも、一定数サポーターの方に残っていただいていて、サポーターの方々が弊社の(ヴィッセルとは)関係ないキャンペーンにも参加いただいていました。
スポンサーに復帰した2020年ごろは、当時スポーツ界は(コロナ禍で)結構厳しい状況にあったと思います。これからスポーツ、サッカー、Jリーグはどうなっていくんだろうと、皆さん不安に思っていらっしゃった段階だったかなと思う。そこでどこかのチームと一緒にやっていくなら、いままでの関係性とストーリーを生かして、ヴィッセルさんと一緒にやらせていただくのが一番いいのかなというのが思いました。
また、前年の天皇杯で優勝していて、ヴィッセルさんが上り調子だったこともありました。
――LIFULLさんはヴィッセル神戸のスポンサーの中でも、比較的神戸と縁遠い企業ですね。チーム選定の際に(本社を置く)東京など他地域の検討はされましたか。
「神戸のチームを応援するメリットとして先ほど話した過去のストーリー、弊社のサービスに対して好意的に思ってくださる方が神戸にたくさんいるというのが一番神戸を選ぶメリットです。
デメリットとしては、大阪・神戸で仕事をしている社員
は少ないことですね。大阪拠点の営業メンバーで、神戸の不動産会社様をクライアントとして担当しているメンバーが一部いるくらいです。大きく社内を巻き込んでいくとなると、こちら(東京)から行きやすい関東のチームを選んだ方が、メリットがあります」
――たくさんの種類のスポーツがある中で、特にサッカーを選ばれた理由は何でしょう。例えば、プロ野球はメディア露出も極めて多いですが、それら他競技と比較してJリーグを選んだ特別な理由はありましたか。
「これは明確な理由があります。
スポーツの中に“一緒に応援する”という立場として入っていき、それによってスポーツファンの仲間内に入れていただく。そのファンの中で、うちのサービスのことを好きになってもらい、家を探す・家を売却するという段階になったときに、競合他社よりもうちを選ぼうと思っていただくことが、スポンサーをした狙いです。
それを考慮したときに、ファンベースが強固にあるという点は大切だと考えています。その点でサッカーはすごく連帯が強い、仲間意識が強いという特性があると思います。
サッカーファンはチームに対する帰属意識やスポンサーを仲間と思ってくれるといったチームを支える意識がとても強いかなと思っています。そこに魅力を感じています」
