渡邉まひろさん(日本工学院八王子専門学校 サッカーコース2022年3月卒業)は現在、公益財団法人東京都サッカー協会に勤務する同校OGだ。都内で開催される公式戦の運営や広報、普及活動などを行っている。

サッカーコース在籍時にはマネージャーとしてコースを支え、現場での実戦経験を通じて学んだノウハウは現職でも活かされている。学生時代の仲間との絆は今も健在だと語る同氏に、当時の思い出やサッカー業界で働く魅力を語ってもらった。
「記念受験でもいいから…」実った信念
――現在の仕事に就いたきっかけは?
「実家がテニスコートを経営していて小さい頃からスポーツが身近にありました。祖父や叔父がスポーツ関係の仕事をしていることもあり、スポーツの仕事に就きたいなと考えていた中で日本工学院のサッカーコースに入って、サッカー関係の仕事をしたくて就活をしていた結果、先生から東京都サッカー協会を紹介していただいて、ここまでたどり着きましたという感じです。
一般企業の内定をいただいていましたが、最後の最後までサッカー関連の就職は探していました。卒業期の冬休みまでに決まらなかったら一般就職しようと先生と話していて、もう諦めていましたが、冬休み直前に話をもらい、これがラストチャンスだと思って、悩まずその場でお願いをしました。正直、記念受験でもいいから受けてみようみたいな感じでした」
――やりがいを感じる瞬間はどんなときですか。
「私自身も小さい頃からずっとサッカーをやっていました。当時からの知り合いや日本工学院のみんなと一緒に仕事ができたときや、選手や関係者の方にお礼を言われたときに一番やりがいを感じます。
入局1年目の10月、Jリーグの試合で日本工学院の同級生や後輩、先生と一緒に仕事をしたことと2024年のクラシエカップの決勝で、所属していた少年団の憧れの先輩と一緒に仕事ができたことが今までですごく嬉しかったエピソードです」
――サッカーコースに入学しようと思ったきっかけは何ですか?
「スポーツの仕事に就きたいと思ってからそんなに悩むことなくサッカーを選び、サッカーを専門で学べるところは少なかったので、マネジメント系も見ながらオープンキャンパスにはたくさん行きました。そんな中でサッカーをメインに学べる学校は2校ほどしかなくて、親や先生とも話した結果、日本工学院を選びました」
――ほぼ男子しかいないコースですが、抵抗はありましたか?
「そこはサッカーコースの先生方にも入学前から心配されたところではありましたが、私はそもそも男兄弟の中で育っています。兄と弟がいる真ん中でしたし、少年団のときも100人の中で私も含めて女子が2人程度しかいない環境だったので特に抵抗はありませんでした」

天皇杯決勝で日本工学院時代の同級生と再会。やりがいを感じるひとときだ
臨機応変に対応する力がついた
――実際にサッカーコースで行っていたことは何ですか。
「高校のサッカー部のマネージャーとほぼ一緒なんじゃないかなと思います。朝、選手よりも早く行きビブスや用具の準備をしたり、コロナ直後だったので、各自のスクイズボトルの水を入れたりとか。練習中は使わないマーカーコーンを片付けるなどをしていました。
私がやっていたことは、私が入学前は専属でやっている人がいたわけではなく、一から何をしたらいいかを考えながら学校生活を送っていたので、自分で考える力が身につきました。今でも試合の運営では予想していたことと違うことが起きたりするので、そこで臨機応変に考える力がついたのは日本工学院での2年間があったからかなと思います」
――当時の仲間とは今でも交流がありますか。
「はい。特に社会人1年目は日曜日にみんなの試合を観に行って、話を聞いてもらって、月曜日からまた仕事を頑張るという感じでした。職場では周りに同世代の社員がいないので、学生時代の同級生や先輩後輩、先生を大事にしています。
サッカーコースは月曜日しか休みがないので、1週間のうち6日間、しかも朝から晩まで一緒にいたので、どちらかと言えば友達よりは家族のほうがイメージは近いです」

日本工学院八王子専門学校時代の渡邉さん(後列右から3人目)
率直に向き合い続けた2年間。あだ名は“ママ”
――学生時代を振り返って、思い出に残るエピソードはありますか。
「学生時代は強気の発言しかしていなかったと思います(笑)。卒業期の1月にAチーム(日本工学院F・マリノス)の神奈川県1部リーグ入れ替え戦がありました。負けたら2部に落ちるという試合で、それがちょうど二次面接の2日前でした。私自身も面接を前にものすごく緊張していて、落ちるかもしれないプレッシャーの中で迎えた試合で、雰囲気としては最悪でした。
その年は負けてばかりで、正直この試合もダメなんじゃないかと感じていました。気持ちがばらばらで試合に入ったのですが、日本工学院が先制点を取りました。気づいたらキャプテンが泣いていて、ハーフタイムで帰ってきたときも泣いていたので、『今泣いている場合ですか。試合は終わってないですよ。勝たないと2部ですよ』みたいなことを言ったのを覚えています。
結局5対2で勝って、終了のホイッスルを聞いた瞬間には全員泣いて喜びました。1チーム年間20試合・30試合以上とやっていた中で最終的には一番いい雰囲気でやれた試合だったと思います。
高校選手権の最後のロッカールームのような選手を慰めるマネージャー像なんかは全くなくて、先輩だろうが後輩だろうが喝を入れることしかしてなかったと思います。朝、電話で選手を起こしたりもしていたので、あだ名は“ママ”でしたね(笑)」
――サッカーやスポーツ業界で働くうえで大切なことは。
「学ぶ力と吸収する力だと思います。言われたことに対して、やらずに反論する人ってどこにでもいると思うんですけど、やってみて吸収したほうが絶対にいいと思います。何かを言われたら一回考える。突っぱねるのではなくて、『こうしたほうがもっと良くなるんじゃない?』と言われていると思ってやる。そういう吸収する姿勢が大事だと思います」
――最後にこれからスポーツ業界を目指す皆さんにメッセージをお願いします。
「スポーツ業界は一般企業と違い求人が基本的に外には出てきません。やりたい気持ちがあるなら、クラブのアルバイトやボランティアスタッフの募集を見つけて、そういうところから自分をアピールしていくことや、人に伝えたり、言い続けることが大切だと思っています」
※この記事はQoly編集部と日本工学院八王子専門学校の産学連携企画として実現しました。同校スポーツ健康学科スポーツビジネスコースの学生が取材・撮影・執筆した内容を掲載しています。
