2002年のドラフト11位で横浜DeNAベイスターズに入団し、広島カープと埼玉西武ライオンズにも在籍。2017年に引退した木村昇吾氏は、その後にインドに渡り、今もクリケット選手としてプレーを続け、クリケットの日本代表チームでも活動している。

そんな木村氏にFA宣言するも「セルフ戦力外」を味わった後に移籍した西武時代に交流のあったレジェンド選手との思い出や、大谷翔平選手と対戦した時のエピソードを語ってもらった。

画像: (C)JUN.S

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――広島からFA宣言した後、2016年からは埼玉西武ライオンズでプレーされることになりました。木村さんにとって、西武はどんな球団でしたか?

イースタンリーグで同時期にプレーしていた中村剛也選手や栗山巧選手もいましたし、過ごしやすくて素晴らしい球団でした。

――お話に出た栗山選手は、2026年シーズン限りでの引退を発表し、8月30日に引退試合を行うことが決まりました。

栗山選手は本当に求道者ですよ。

僕は移籍初年度のある試合で、当時日本ハムでプレーしていた大谷翔平選手の160キロのボールを打って、センター前ヒットにしたことがあるんですよ。

1番の秋山翔吾選手(現、広島)が大谷選手に三球三振を奪われた後、2番の僕が初球をセンター前に運ぶと、球場も少し変な空気になって。ファンの皆さんはランナーが出た盛り上がりよりも、驚きや戸惑いの方が大きかったように感じました。

そんな初回の攻撃が終わってベンチに戻ると、栗山選手が僕に話しかけてきて。

「昇吾さん、何をしてくれてるんですか! 秋山翔吾が三球三振した後、初球をヒットにしたら、大谷君が本気になるじゃないですか。やめてもらっていいですか?」と冗談混じりに言うんです。

僕も「こっちも必死やねん。(大谷選手のような)大物投手を打ちたいんや」と関西人ぽいノリで応戦すると、栗山選手は「いやいや、初見で160キロのボールは打てませんよ」と返してくれて。やり取りはそこで終わりました。

関西人ぽいノリで応戦してきて。やり取りはそこで終わりましたが、その後も試合は着々と進み、やがて僕の第2打席を迎えました。

画像: (C)Getty Images 現在はMLBのロサンゼルス・ドジャースでプレーする大谷翔平選手

(C)Getty Images 現在はMLBのロサンゼルス・ドジャースでプレーする大谷翔平選手

――第2打席はどのような狙いで打席に立ったんですか?

僕は「また大谷投手の真っ直ぐを狙ってやろう」と思って打席に立ちました。

大谷投手は再び160キロ近い真っ直ぐを投げてきてくれたんですけど、第一打席に見た真っ直ぐとは
球筋が少し異なり、少し下に変化しているような感覚がありました。

予想とは違う球筋の速球でしたが、それでも僕はバットの下側に当て、打ち返したんです。するとボールはワンバウンドし、その後に大谷投手の頭上を越えて。もしかしたら「センターに抜けるかな」と思ったんですけど、残念ながら相手の内野手に取られてしまい、ヒットにはなりませんでした。

――アウトになってしまったら、栗山選手に弄られることはなさそうですよね。――

そう思うじゃないですか。僕も「惜しかったけど、これで何も言われないだろう」と思ってベンチに戻ると、再び栗山選手がさっきの調子で僕に話しかけてきたんですよ。

「バットの下っつらに当ててしまった」と僕が悔しがっていると、「何、下っつらに当ててるんですか!」と驚いた様子で、栗山選手はこう続けたんです。

「バットの下っつらに当てられるって、大谷くんのような(速球派の)投手にとしては屈辱的ですよよ。さらに大谷くんが本気を出してしまうじゃないですか!」

対する僕も「若干落ちたんや!」と返答すると、栗山選手は「160キロ出ていたら落ちません!」と応戦してきて。再びやりとりに発展しました。

――栗山選手は、一瞬の出来事をそこまで深く観察されているんですね。2000本安打を放つ実力の片鱗を見たような気がしました。

そうですね。流石にその時は「なんでアウトになったのに、弄られなあかんねん!」と感じずにいられませんでしたけど(苦笑)。実はこの話には続きがあるんですよ。

その後に僕が怪我をしてしまい、復帰に向けてリハビリに励んでいると、グラウンドで練習していた栗山選手が再び僕の元に来て、こう話してくれました。

「やっぱり、野球はしっかり準備して、初球をもう狙い澄ましたかのようにセンター前に放つのが基本ですよ。昇吾さんの打撃を見て、160キロの速球に負けないバッティングを心がけようと思いました。勉強させていただいて、本当にありがとうございます」

栗山選手のその言葉を聞いた時に、もう惚れそうになって。

画像: (C)SEIBU Lions

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――心の掴み方が上手ですね。

そうなんです!しかもそこから栗山選手は「どうすれば、そんなに力まずに打てたんですか?」とか、「結果は凡打でしたけど、実際は限りなくヒットに近い当たりでしたし、投手としては普通にヒットを打たれるよりもショックが大きいかも知れませんよ」などと色々と話しかけてくれて。野球談義に花を咲かせたことが印象に残っています。

栗山選手よりも身体能力に優れた選手は、これまでにたくさん見てきましたけど、そのほとんどが2000本もヒットは打てなかった。栗山選手が長きにわたって活躍できたのは、栗山選手の野球に取り組む姿勢や、「自分がどうすればプロの世界で生きていけるか」を考え抜いたからこそなのかなと。

「こんなに自分の打撃を追求できているんだから、2000本安打を打てるだろうな」と感じずにはいられませんでしたし、年下ではあるものの、僕にとってはかけがえのない尊敬できる方ですね。

取材:JUN.S

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