現在開催中の「FIFAワールドカップ2026」は、日本でも大きな話題となっている。熱狂の中心にいるのが、SAMURAI BLUEことサッカー日本代表。オランダ、チュニジア、スウェーデンと同居するグループFにて、6月15日に開催された初戦のオランダ戦は2-2のドロー。
決勝トーナメント進出がかかる第2戦チュニジア戦は、日曜13時キックオフという絶好の時間帯ということもあり、全国各地で「応援イベント」が開かれた。兵庫県尼崎市にある「浦風小学校」では、卒業生である堂安律を応援するイベントが開催。
「野球の街」に生まれたサッカー日本代表10番
阪神電車の大物(だいもつ)駅から、徒歩10分ほどにある浦風小学校。隣町である西宮市は、プロ野球阪神タイガースの本拠地である「甲子園球場」があり、尼崎もまた「野球」色が非常に強い地だ。さらに大物は、2025年春より、大物駅すぐにあるゼロカーボンベースボールパーク内の「日鉄鋼板SGLスタジアム尼崎」がタイガース2軍本拠地となり、さらに拍車をかけている。
一方でセレッソ大阪のスクールや、元日本代表本田圭佑がプロデュースする「ソルティーロファミリアスクール」があったりと、サッカーが盛んな町でもあるのが尼崎。そこに生まれ、中学時代までを過ごしたのが堂安律。会場となった浦風小学校では、校門に「応援イベント」と大々的に掲げられるなど、この日はサッカー一色に。

浦風小学校は、サッカーもといスポーツが特別盛んというわけではない、よくある“普通の公立小学校”。日曜13時キックオフというのも、視聴者にとって嬉しい話で、わざわざ学校まで観に行く必要性もない。それでも、いざ校内に入り、会場である体育館に向かうと、そこには即席で用意したパイプ椅子がほぼ満席となるほどの盛り上がり。この日のタイガースが、甲子園球場でなく横浜スタジアムで試合が開催され、それもナイターだったというのも大きかっただろう。

「サッカーネタ、しかもワールドカップの日本代表戦で、何わけのわかんねえこと言ってんだ」と感じる方もいられるだろう。だが、関西における野球の存在は絶大。それも尼崎というのは“最大宗派”のお膝元。
報道に関しても、オランダ戦翌日の6月16日は一面だった“大本営”だが、代表メンバー発表翌日の5月16日は栗林良吏(広島カープ)に1安打完封負けを喫したゲームが選ばれている。“そういうところ”なのだ。
ガンバOBたちの華麗な連携

(C)Getty Images
スウェーデン戦での大敗(1-5)を受けて、中田英寿とパルマ時代に同僚だったサブリ・ラムシを解任し、後任に前回大会でサウジアラビア代表を率いたエルヴェ・ルナールが就任したチュニジア代表。ここで負けると、グループリーグ突破が極めて厳しくなるため、日本戦は絶対に負けられない戦いだ。
しかし、開始早々先制したのは日本代表。左サイドを突破した中村敬斗の折り返しに、鎌田大地が左足で合わせて先制点。ガンバOBの華麗な連携に、会場内も一気にヒートアップ。その後も日本が優勢に進める中、ハイドレーションブレイク後の31分には、板倉滉からの縦パスを受けた上田綺世が右足を一閃。追加点を決めてさらに優位に立つ。
なお堂安は、右ウイングバックの位置から、冨安健洋との連携でチュニジアのキーマンであるハンニバル・メイブリを厳しくマーク。反撃の糸口を与えない。そのまま前半は終了。
続く躍動と、黒子に徹する“主役”
メキシコの地で見せるサムライたちの躍動に、体育館内の“観客”も大いに満足。しかし肝心の“主役”のゴールが見られないので、自ずと追加点を切望する空気を醸し出しながら後半戦へ。やや膠着状態となる中、後半14分にはペナルティエリア内に侵入したアリ・アムディの突破に、堂安が冷静にスライディングでカット。守備での好プレーに一気に歓声がわく。
後半27分には、田中碧の縦パスに反応した上田がダイレクトで浮き球パス。それに反応した伊東純也が、抜け出して冷静に決め三点目。試合を決定づける。直後最初の選手交代が行われ、鎌田大地に代わって鈴木淳之介、そして堂安律に代わって菅原由勢が入る。ここでお役御免となった堂安に、会場からは惜しみない拍手。浦風小学校目線でいえば“主役”が退いたわけだが、熱気は下がるどころかさらに高まる。MCの煽りに、子どもたち中心に自然と「オーニッポン」コールが生まれる。

そして後半38分、佐野海舟の右からのクロスに上田がヘッドで合わせ、この日2点目のゴールでダメ押し。終わってみれば、ワールドカップ史上最多4得点の大勝劇で、決勝トーナメント進出に大きな前進となった。
地元が盛り上がってくれれば
試合終了後は、大きな拍手とともに、主催者の掛け声とともに、パイプ椅子や体操マットが片付けられる。ものの数分で原状回復がなされ、ホスピタリティの高さを感じさせる。
小学校側によると、このイベントに参加したのは約300名。主催したのは、近くにある商店街で店を営む明比(あきひ)さん。堂安とは面識もなく、浦風小学校卒業生でもないとのことだが、「地元を盛り上げたい」との一心で、このイベントを企画したという。

試合中MC役として盛り上げた花井仁哉さんは、サッカー好きで、尼崎に実家があったこともあり、明比さんからの依頼を受けて参加。普段はお笑い芸人として活動しているとのことだ。堂安とは直接的な縁はないものの、友人の知り合いが…だったりと、地元ならではな繋がりはあるとのこと。また、小田南中学校時代に、授業を教えていた教師も参加していた。

オランダ戦の2得点も含め、今大会の日本代表は、過去最高のゴールラッシュとなっている。となると、前回2022年に2度ゴールネットを揺らした堂安にも、俄然期待が集まるだろう。それを目撃するのは、次戦スウェーデン戦か、はたまたその“先”か…ここ尼崎の地でもしばらくは「猛虎」とともに、「侍」が話題を集めそうだ。
取材・執筆:向山純平
写真:向山純平、Getty Images

