Qolyアンバサダーのコラムニスト、中坊コラムの中坊氏によるコラムをお届けします。
ターンオーバーの重要性
各国のリーグ戦ではもちろん見る機会があり、肥大化したW杯においても避けては通れないのが、グループステージ(GS)3試合目で主力温存・控え選手とのスタメン入れ替えを行う、いわゆるターンオーバー。
日本も2018年ロシアW杯における第三戦、ポーランド戦や2022年カタールW杯における第二戦、コスタリカ戦でのターンオーバーがファンの間で印象深い。
今回、2026年W杯から出場国数が48か国にまで拡大し、決勝トーナメントがベスト16の戦いからではなくベスト32の戦いから始まるため試合数も増加。ますます主力の疲労軽減を意識したターンオーバーの重要性が高まった。
GS第二戦終了時点で勝ち点4以上を獲得し、「負けてもGSの2位通過、3位通過可能」という状況下の国がどこまで第三戦でターンオーバーしたのか、そしてその後ベスト32でどのような結果になったのかをまとめた。
GS第三戦で行ったターンオーバー人数実績とベスト32結果
〇ベスト32で勝利
11人:ノルウェー
9人:アルゼンチン、アメリカ
6人:メキシコ
5人:エジプト、モロッコ、イングランド
4人:スイス、フランス
3人:コロンビア
2人:スペイン、カナダ
1人:ブラジル、ポルトガル
●ベスト32で敗退
3人:日本
2人:ドイツ
1人:オランダ
この通り、非常に露骨な結果が出てしまっている。
この結果「だけ」を見るなら、「ターンオーバーをすればベスト32で勝てるとは断言できないが、ターンオーバーをしないとベスト32で敗退する可能性が高い」ということが見てとれる。
集計結果上、あまりターンオーバーをしなかった日本、ドイツ、オランダの3カ国だけがベスト32敗退という結果に終わり、逆に大幅なターンオーバーをした国はベスト32を勝ち上がっている。
もちろん、「そもそも強豪国だからターンオーバー可能な選手層と実力を持っている」という側面もあるため、前述の通り、ターンオーバーさえすれば勝てるという単純な話では決してない。
これ以降は個々の国について考察したい。
アルゼンチン:9人ターンオーバー(ベスト32勝利)
アルゼンチンはベスト32でカーボベルデ相手に延長戦突入というまさかの死闘、そして疲弊を強いられ、試合を見ていても延長戦終盤は選手達が疲労困憊な様子が窺えた。しかし、GS第三戦のヨルダン戦で大幅なターンオーバーで9人も主力温存したことは救いだった。
もし第三戦でも主力陣をフルに使っていた場合、GSでの疲労とベスト32での疲労があいまって決勝トーナメントでの勝ち上がりの苦しさに影響しただろう。
ブラジル:1人ターンオーバー(ベスト32勝利)
ほぼターンオーバーせずスタメンそのままで挑んでいるブラジル。アルゼンチンと対照的だが、これはアルゼンチン代表のリオネル・スカローニ監督が就任8年目を超えているのに対し、ブラジル代表のカルロ・アンチェロッティ監督は2025年に就任しまだ1年程度しか経っていないことも理由の一つと考える。
スカローニ側は戦術面しかり選手構成しかり長期政権により万全の体制で、構築し尽されているのに対し、アンチェロッティ側はチームビルディング期間としてまだ短く、主力温存よりもベストメンバーで戦っていく中でチームをより成長させていく方策を採ったものと考えられる。
日本:3人ターンオーバー(ベスト32敗退)
第三戦のスウェーデン戦は「負けてもGS突破だが、3位通過の場合フランスが相手」という難しい状況であった。それを踏まえ、森保監督は大幅なターンオーバーは行わず、主力の中村敬斗と堂安律、鎌田大地らをスタメン起用。
そしてベスト32のブラジル戦では、WB中村敬斗と堂安律はタフなゲームで限界が来て途中交代、鎌田大地も試合中にケガをしたので交代という形となった。
スウェーデン戦で佐野海舟と冨安健洋だけを温存するのではなく、鎌田、中村敬斗、堂安も休ませていたらブラジル戦で違う策がとれただろう。そして同時に、そこまでの人数を休ませた上でもスウェーデンに勝てる強さが求められる。
つまり「5人以上のターンオーバーをして欧州中堅国を倒せる」、そんな質と層まで高めるのが、今後の日本代表の目標となるだろう。
ドイツ:2人ターンオーバー(ベスト32敗退)
ドイツはGSの2連勝で勝ち点6を積み上げていたにも関わらず、第三戦のエクアドル戦でターンオーバーをほぼ行わず、フルメンバーで挑んで試合は同点のまま推移し、選手に疲労を溜めた末、後半からターンオーバーを始めて失点し、エクアドルに逆転負けという失態に至った。このユリアン・ナーゲルスマン監督の采配は疑問で、いずれも中途半端な策であり、とどめがベスト32、パラグアイ戦でのPK戦敗退である。
フルメンバーで挑んでGSの結果も落とし、肝心の決勝トーナメントでも負けるという最悪の結果だった。これならば第三戦でターンオーバーをすべきだった。
筆者:中坊(中坊コラム)
1993年からサッカーのスタジアム観戦を積み重ね、2025年終了時点で1,029試合現地観戦。特定のクラブのサポーターではなく、関東圏内中心でのべつまくなしに見たい試合へ足を運んで観戦するスタイル。日本国外の南米・ヨーロッパ・アジアへの現地観戦も行っている。
中坊コラム:https:note.com/tyuu_bou X:https:x.com/tyuu__bou



