大谷翔平が実際に試合で使用したスパイクがアメリカでオークションに出品され、大きな注目を集めている。

『Los Angeles Times』が伝えたところによれば、出品されたのは、ドジャースが2025年3月に東京ドームでシーズン開幕戦を戦った際に大谷が着用したもの。大谷の愛犬「デコピン」を題材にしたアートが描かれ、アルファベットではなく漢字による直筆サインも入っているそう。

東京で行われた歴史的な試合で、日本を代表するスーパースターが履いた一点物。オークションを担当する会社は、このスパイクを「日本の地で着用された、文化的にも極めて重要な野球用品」と位置づけている。

しかし、興味深いのはその価値だけではない。このスパイクを大谷から購入し、今回オークションへ出したのは、福岡を拠点とする日本企業「TTU株式会社」だという。

美容・ウェルネス関連商品の流通を手掛ける同社は、なぜ自社の商品とは直接関係のない大谷の使用済みスパイクを購入したのか。そこには、アメリカ市場への進出を見据えた大胆なマーケティング戦略があったようだ。

TTUは、日本やアジアで美容・ウェルネス商品を流通させる企業で、他社が製造した美容関連商品を市場へ届ける役割を担っている。使用済みスパイクを買うことにはほとんど関連性がないように思える会社だ。

だが、同社が求めていたのはスパイクそのものではなく、そこから生まれる注目だったという。

TTUは2026年、ロサンゼルスに米国法人を設立。日本やアジアで展開してきた事業をアメリカへ広げるにあたり、同社には大きな課題があった。それは「会社の存在を、どのように米国の企業や消費者へ知ってもらうか」。

そこで目を付けたのが、絶大な人気を誇る大谷翔平だった。米国法人のCEOはスパイクを購入した理由について、アメリカ市場へ参入する際の企業プロモーションに利用できると考えたと説明している。

大谷の名前が付いた記念品をオークションへ出せば、米国メディアが取り上げる。記事を読んだ人は、スパイクを所有していた日本企業についても知ることになる。大谷のスパイクは、同社にとって「広告媒体」だった。

TTU株式会社のCEOは、スパイクを売ることでどのように会社の認知度を高められるのかとの質問に対し、以下のように語ったそうだ。

「このインタビューが企画されたこそ、その答えです」

世界的なオークションをメディアが取材し、記事の中で会社名と米国進出の計画が紹介される。その報道自体がTTUの狙っていた広告効果だったという。

大谷と正式なスポンサー契約を結ぶには莫大な費用が必要になるが、本人が実際に使用した希少な記念品を購入すれば、自社の存在を広められる。落札額によっては購入費用の回収も期待できるため、広告と投資を兼ねた施策なのだという。

このオークションを運営するのは、ロサンゼルスを拠点にスポーツやエンターテインメントの記念品を扱う「The Realest」。同社は今回のスパイクを、美術品にも匹敵する「博物館級」「投資級」のアイテムとして売り出している。

過去には、コービー・ブライアントがアキレス腱を断裂した試合で履いていたシューズが66万ドル(およそ1億円)、マイケル・ジョーダンの「The Flu Game」で使用されたシューズが140万ドル(およそ2億2000万円)で落札された。

通常の広告を出しても、知名度のない海外企業が米国で注目されるのは難しいが、大谷のスパイクをオークションへ出品すれば、世界中のスポーツファンやメディアが関心を示す。TTUにとって米国市場へ自社を紹介する名刺となったようだ。

筆者:石井彰(編集部)
画像提供:Getty Images

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