9月に行われたリオデジャネイロ五輪2次予選で、激闘の末に最終予選進出を決めたベトナム女子代表の乗松隆史監督に、ベトナムフットボールダイジェスト(VFD)が直撃インタビューを行い、同予選を振り返ってもらうとともに、就任から現在までについて語ってもらった。

※聞き手:ハタメグミ(イラストレーター兼ライター)


-リオデジャネイロ五輪アジア2次予選を振り返った感想をお聞かせください。

乗松「今年最大の目標でしたから、それを良い結果で締めくくれたということで、充実感と安堵感でいっぱいです」

-契約の際に、予選突破など、成績上のノルマなどは設定されていたのでしょうか?

乗松「提携関係にあるベトナムとの友好の懸け橋として、日本からの指導者派遣事業で来たため、成績上のノルマがあったわけではありません。ただ、一国の代表監督ですので、世論も含めた中で、成績が出ないのに居座っていられる場所ではないですから、そこは意識して仕事をしてきました」

-初戦の台湾戦を試合終盤の失点で落としましたが、ここからチームは快進撃を見せて、3連勝で奇跡的に予選突破を果たしました。

乗松「大会では、一試合毎に集中させるということが難しかったです。初戦では、難敵になるであろうと予想された台湾をいかに上手くかわすかに焦点を絞りましたが、それが上手くいきませんでした。ミャンマー戦、ヨルダン戦、タイ戦で、それぞれ個別の作戦を立て、自分たちが最も効率的に戦うことに集中し、台湾戦以降では順当な試合運びができたというだけで、快進撃だったとは思っていませんし、実力以上の何かが左右して奇蹟的に勝利したとは考えていません。もちろん初戦を落としたことで、周囲が不安から色めきだっているのは感じましたが」

-2次予選を通して、キーポイントとなった試合はありますか?

乗松「これは完全にヨルダン戦(2-1)です。タイやミャンマーに比べて、情報がないヨルダンが最も怖い存在でした。周囲が格下だと思っているヨルダンでしたが、そんな中で順当に勝つということは難しいですし、相手も1勝を手土産に帰りたいと思っているのは間違いないので、油断から引き分けなどに持ち込まれたら、今回の結果はなかったでしょう。そういったことから、一番メンタル的に難しかったのはヨルダン戦です」

-男子のベトナム代表でも、格下とされる相手に苦戦を強いられることがよくあります。

乗松「これだけ情報網の発達した現代で、サッカーにも大量のデータが盛り込まれている中、何を持って格下と言っているかですね。下のランクのチームは、もっとシビアに分析をしてきますし、追われる側はそれを上回る情報の刷新がなければ、いつでも逆転される可能性があります。今回で言うと、台湾が2位となり、タイが3位となってしまったという結果にも反映されていると思います」

(C) VFD, 乗松隆史監督

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