なぜ「ハッキリしない」のか

では、なぜ彼らの強さが「ハッキリしない」のか?それはストライカーという点で安定した強さがないことだ。

現在トップで使われているのは主にナイフ・ハザージ、ナースル・アル・シャムラーニ、そしてムハンマド・アル・サハラウィの3名だ。

かつての英雄ヤースル・アル・カフターニの後継者として期待された本格的な点取り屋ナイフ・ハザージ。大きな人気を誇る一方、常に怪我に悩まされ、好調が続かないという欠点があり、今もそれほど状態はよくない。

前線でターゲットになれて、パスも出せて、頭でも足でもゴールが奪え、パワーもスピードもある。しかしハマらないとうまく活躍できず、代表ではどうも頼りきれないところがある。

スピード豊かで忍者的プレーを得意とするナースル・アル・シャムラーニは、ご存知2014年のAFC最優秀選手。サウジアラビアリーグ得点王5回の実績を持つ。

ただ、彼もクラブの活躍が国際試合に生かされない人物だ。そのスタイルがどうも代表と合わず、良いスルーパサーがいてこその彼という感じである。

したがって、最も注目すべきはムハンマド・アル・サハラウィなのかもしれない。

彼はなんと代表でこれまで27試合24ゴールというとんでもない得点率を誇るストライカーで、10番も背負う。圧倒的なシュート技術と抜け目のなさを持ち、両足と頭で点を取れる。自分でも仕掛けられ、アシストも生かせる。

ただ、彼は強い相手に先発で使って90分を計算することを考えると、ちょっとチームとして組み込みにくいところもあり、またこのところはずっと怪我を抱えていたため万全ではない。

現在のサウジアラビアは「良いストライカー」が3人でなんとか「絶対的ストライカー」の不在を補っているという状況にある。それがハッキリしないと言う理由だ。

彼らを90分封じることは、これまで世界を相手に戦ってきた吉田や森重にとっては不可能なミッションではないだろう。

だからこそ、サウジアラビアが強みとする2列目への対処が最も重要なポイントになるはずだ。

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