多くの日本人選手が海を渡り、欧州のサッカーへと挑戦する時代。Jリーグで活躍した者だけでなく、学生から直接海外に出る者も増えている。

ただ、サッカーで成功することは決して易しい道のりではない。誰もがビッグリーグやUEFAの大会でプレーすることを夢見るが、それを実現できる者は少ない。

そんななか、「東欧のブラジル」とも呼ばれるセルビアの1部リーグで数年間ずっとレギュラーを掴み続けている選手がいる。

それが、志村謄(しむら のぼる)だ。

セルビア1部の中堅クラブであるスパルタク・スボティツァで背番号3を手渡され、外国人選手としてはクラブ初となるキャプテンマークも巻いた。DFとMFの両方をこなし、チームにとって欠かせないピースとなっている。

彼はなぜ欧州で成功することができたのか。あとに続く「海外挑戦者」に伝えたいことは何か。

選手の海外挑戦をコーディネートする『EUROPLUS』(https://www.europlus.jp/)、そしてセルビアやモンテネグロで長く取材活動を行ってきた石川美紀子(https://twitter.com/go5imikko)の協力により、Qolyが志村謄選手にインタビューを行った。(取材日:12月10日)

「ドイツよりもモンテネグロ1部で」

――志村選手、まずはキャリアの振り返りから。モンテネグロのクラブと契約したのは2015年の1月。どんなビジョンで海外挑戦を決めたのでしょう?

最初はJSC(ジャパンサッカーカレッジ)でプレーしてプロを目指していました。ただ練習参加などでオファーや契約を勝ち取るということはできなかったんです。

どうしようか迷っている時、『EUROPLUS』さんの斡旋でモンテネグロやドイツに行けるという記事を目にしました。

最初はドイツの下部リーグにチャレンジしたいという思いで話を聞いたんですが、「それならモンテネクロの1部リーグでプレーした方がステップアップに繋がる」と教えて下さったんです。

「日本代表を目指す」というよりは、まず個人的にステップアップしたいという思いでした。

5大リーグやJリーグに行くことは考えていましたが、同じくモンテネグロからステップアップした加藤恒平選手が2017年にハリルジャパンに招集されたのを見て、「結果を出せば代表はついてくるもの」だと感じるようになりました。

――モンテネグロではその後2年半プレーし、FKベラネ、FKモルナル、FKボケリ、そしてFKスティエスカ・ニクシッチと4クラブに所属されました。以前インタビューしたとき、「ここでは守備の選手もゴールを奪わなければいけない」と仰っていたのが印象的でした。

モンテネグロリーグの試合はそれほど海外で放送されるわけではないので、「数字で現れる結果」が必要ですね。ステップアップするためには、センターバックでも「セットプレーで点が取れる力がある」のが大切だと思います。

――その後、2017年にはセルビアへと「ステップアップ」で移籍されます。その印象は?

モンテネグロとは違いましたね。技術面もそうですし、リーグにレッドスターやパルチザンという大きなクラブがあることも。

より戦術がしっかりしていましたし、まずそれを理解することが必要でした。言葉もコミュニケーション力も必要でしたね。サッカーの技術以外にもそういうものが必要になる国です。

ヨーロッパリーグの予備予選にも出られました。国外のチームと戦うので、移動や対戦相手も含めてすべてがすごい経験でしたね。

日本なら飛行機でも荷物を受け取ってすぐ出られると思うんですが、イギリス経由で移動したときは入国するための手続きがとても大変でした。

ただ、その熱狂的な雰囲気で戦えたことが自分の「基準点」になりました。その状況でも自分のプレイスタイルやメンタリティを変えることなく普通にやれた。それが自信になりました。

日本と全然違う点のひとつが警備です。武装した警察や兵隊がスタジアムを囲んでいるような環境でやれたことは、すごい経験でしたね。