苦境の中での監督就任とチームの立て直し

――低迷していたチームを立て直すのにどのようなマネジメントを心掛けたか

オファーをいただいて、監督という立場にならせてもらったタイミングは、本当に難しい状況だったと思います。本当に僕自身の力不足もあったし、選手のメンタリティーの部分はどん底だったのは間違いないんですよね。

そのときに選手に伝えたのは、「自信を持とう」というような話はしていたんですね。ただ、そんな状況で自信を持てないじゃないですか。

でもそのときに目にした記事があって、『エフィカシー(困難な問題を解決しなければならない状況下でも積極的に取り組む意欲)』という言葉があります。

自信は基本的に過去の自分や今起きた現象に対する成功体験で持てるものと捉えられていたけど、実はそれだけじゃなくて、未来に対して「自分たちはこうなりたい」とか、「こうなってみせるんだ」というような希望や願望からも、自信を持てるというような考え方があるんですよ。

それをしっかりとエネルギーに変えて、チーム全体の力に還元していければ、こんなに素晴らしいことはないという記事を、その当時目にしました。

これはまさに自分たちに一番当てはまる言葉と取り組み方だと思ったので、それを選手に伝えました。難しい状況だし、これまでの自分たちに自信を持つことは当然できないけど、視点を変えて自分たちは「こうなろう」に対して、自分たちを持っていけば、それが自信に変わる。

そうやって自分たちを引き上げていこうと、選手たちやスタッフに話続けていたことを覚えています。

――前任のピーター・クラモフスキー監督(現・FC東京)のチームといまのチームで大きく変わった点は

守備の要素はだいぶ変わったと思います。単純にそういうトレーニングを増やしています。もちろん戦術的に自分たちが「こうやってボールを奪いに行こう」とか、そういった時間、トレーニング、ミーティングも数を増やしました。

それ以外でも、理屈抜きでボールを奪いに行かなきゃいけないシーンや、あるいはゴールを守らなければいけないシーンで、そのときに「どうやって体を投げ出すの?」とか、そういうようなトレーニングは増やしました。

そこは一番変わった部分だと思います。