“ハイプレス型”の弱点をカバーする方策

前項で述べた通り、“ハイプレス型”のチームは高いディフェンスラインの裏を突かれるリスクと隣り合わせだ。その弱点をカバーするのが、機動力にあふれた選手たちだ。

まずは、攻守の軸として君臨する満田誠だ。

ユース出身の満田は、流通経済大より2022シーズンに加入し、ルーキーイヤーからリーグ戦29試合出場・9得点をマーク。加入後はシャドーまたはウィングバックが主戦場だったが、今季はボランチ起用がメインとなっている。

背番号11は、正確なフィードとクロス、プレースキックでチャンスメイクを担う。広島は各選手の前への意識が非常に高く、前線のスペースに長めのボールを供給して、相手守備陣を後ろ向きにして揺さぶる形を得意とする。

その中でも満田はキック精度がとりわけ高く、攻撃の起点として不可欠な存在である。

攻撃だけではなく、守備での貢献も素晴らしい。豊富な運動量でピッチの至る所に顔を出す満田の良さがいかんなく発揮されたのが、第3節・サガン鳥栖戦でのワンシーンだ。

前半15分1秒から、鳥栖はゴールキーパー(以下GK)とセンターバックを中心としたビルドアップを開始。対する広島は、1トップおよび2シャドーがボール保持者にプレッシャーをかけてパスコースを制限し、両WBも高い位置をとって牽制する。

怯まずつなぐ鳥栖は前線のマルセロ・ヒアンへ楔(くさび)のパスを送るが、リベロの荒木隼人がこれをカット。クリアボールがGKの朴一圭に渡ると、朴はすぐさま右サイドバックの原田亘にスローし、原田は前方のスペースにボールを送り込む。

広島はハイプレスのため前線に人数をかけており、自軍の左サイドには広大なスペースが生まれていた。一気にピンチとなる場面だったが、ボランチの満田が全速力でカバーし、サイドに流れたヴィニシウス・アラウージョと並走。タックルを一度はかわされるも、再度食らいつきファウルで止めて、ペナルティーエリア内への侵入を防いだ。

ともすればゴールに直結する可能性のあったシーンだったが、ハイプレス回避時のリスクを満田の機動力が救った形となった。

コンビを組む川村拓夢(8番)も運動量と機動力、推進力がストロングポイント。スキッベ監督はダイナモタイプを中盤の底に2名置くことで、“ハイプレス型”の弱点をカバーしている。